条件付き結婚しませんか？

22.カメラの前 K.side ページ22

＊





流星たちがスタッフさんに呼ばれた10分後、今度は俺としげが呼ばれた。

しげは、さっき俺が構ってあげなかったせいか、一段とだるい絡みでくっついてくる。


それでも俺は、構えるほどの気力は持っているはずがなかった。



……撮影場所へ行けば、流星と顔を合わせてしまう。

いろいろ考えて爆発しそうな頭に、もうこれ以上詰め込むなんて無理だ。



ため息が出るのをグッと堪え、撮影室のドアを開けた。






「お、やっぱあの2人、何しても様になるなぁ」





ドアを開けた先、まだ撮影していたのんちゃんと流星。

それを見たしげは、俺の隣でふとそうつぶやく。



……ほんまや。


今日は"彼氏っぽい"がテーマなせいか、2人のかっこよさが滲み出ている。

特に、あの2人が揃えば、尚更。

Aはやっぱり、こういう背の高くてイケメンが好みなんかな。






「神ちゃん」


『……』


「神ちゃん！！」


『……あっ、どうしたん、しげ』


「次俺らの番やから、準備してって。あと、2人での撮影が終われば、俺らと小瀧たちとで撮るんやってさ」


『あ……そうなんや。ん、わかった』





"悩み事？大丈夫？"と俺の顔を覗くしげ。

しげは昔から勘だけは鋭い。

少しの変化も気づくぐらい、周りを見れてる。


それをわかった上なのか、俺はしげから顔を逸らし、カメラが向けられる先へと進んだ。






『大丈夫やから、はよ撮影終わらそ？』


「お、おん……？」





流星とのんちゃんは、何やらスタッフさんと話してる。

これなら向こうから話しかけられることも、目を合うことも、気にすることもない。


大丈夫、カメラを向けられれば、自然と笑顔ぐらい……。





「じゃあ神山くん、手を差し出す感じで！」


「重岡くんは神山くんの隣で手を差し出して！」





言われたとおり、カメラの前で手を差し出す。

しげもバッチリ決まってるし、あとは自然な笑顔……自然な笑顔……。


にこ、って無理やりあげた口角は、少し震えるけど大丈夫。


そう思って前を向いた瞬間、



流星とAが、楽しそうに笑いながら話してる姿が目に入った。

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