条件付き結婚しませんか？

36.名前で ページ36

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"「好きや、瀬良のこと、大好きやねん」"


そういったのは確かで、もう1度繋がった唇は神山さんの想いを伝えるかのように長く、優しかった。





「……流星に取られたくない、俺が先に好きになったのに、嫌や」


『っ、』


「条件付き結婚なんて口実。瀬良と一緒にいたいための、口実やねん……」






"ごめん"


そう言って離れた神山さんの顔。

いきなり明るくなる視界に、何度も目をぱちぱちさせた。






「瀬良、俺と、結婚してください」


『へ……っ？！』






片膝立ちして、私の手を優しく握って。

条件付き結婚申し込んだ時とは大違いに顔色伺って、不安そうな顔してて。



ドキドキって、不覚にも胸が高鳴る。

好きなわけ、ないのに。






『かみやま、っ、さん、』


「ん、どした？」





それなのに、気になるの。





『名前、……』


「名前？」






もう、その綺麗な声から奏でることがなくなった"私の下の名前"。






『瀬良、じゃなくてっ、』






呼んでほしい。神山さんに。

神山さんだけに、呼んでほしい。






『Aって、呼んでほしい、っ』






こんなこと、前なら精一杯、呼吸が荒くなるぐらい緊張しなくても言えたのに。

なんで、なの？






「……、っ、それ、反則や、」


『へ、なに、っ』


「もっと好きになるから……あかん、そんなかわええこと言わんといて」






ぎゅ、って強く抱きしめる。

そして、神山さんは耳元で"じゃあ、結婚してくれるん？"って。






『結婚、は、』


「結婚は？」

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