異性として見れないと、よく言われます。

36.小さい壁 ページ36

＊





「な、に……」





なんでこんなことをしたんだろう、引き止めた理由は？藤井くん、困ってるじゃん。


そんな考えが次々と思い浮かぶ中、私はまた無意識にも"抱きしめてほしい"と呟いていた。

案の定、藤井くんはびっくり顔。

私ももちろん、驚く以外感情は出てこなかった。





『なんで、私っ……！』






違うよ、っと

間違いだよ、っと否定したかった言葉は






「そういうの、男は勘違いするから……やめてや」






聞いたこともないぐらい低い声でそう言う藤井くんに、掻き消された。







『かんち、がい？』


「瀬良さんも、好きでもない相手に抱きしめてほしいなんて……言わんほうがええで」


『違うっ、違くて……！』


「男はすぐ、俺のこと好きなのかなって期待してまうから」


『ふじいくっ、』


「その期待が……時には、苦しいから」






それは、藤井くん自身の言葉なの？

藤井くんが感じて、思って、本音の言葉なの？


ねぇ、藤井くん……わたし、わからないよ。

藤井くんが、わからない。






「俺ら、ただの友達やん？抱きしめるとか、そういうの、恋人がするものやん。俺らの関係には、達してないで」






そんな震えた声で言わないで。

ただの友達なんて言わないで。


胸が、無性に痛くなるから。




まだ続けて話そうとする藤井くんを止めたくて、腕を精一杯後ろに引いて、抱きしめた。

大きい大きい藤井くんの体では、私の体なんてすっぽり入ってしまうけど


なぜか今は、それが心地よかった。







「っ、……！」


『ただの友達なんて、言わないでよ……』

『もう一度、好きって……私に伝えてよ、』






私の名前を呼んでほしい。

でも1番に、好きって言ってほしい。


ふわりと笑ったあの優しい笑顔で。

コテコテの、聞き慣れた関西弁で。

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