異性として見れないと、よく言われます。

26.好きです。 ページ26

＊





「あ、きたきた」


『……望くん、』






とぼとぼ歩いてきた私に、ふりふり、っと大きく手を振る好きな人。

遠くからでもわかる身長に、整った顔。

……元からわかってたけど、勝ち目ないって。



それが噂通り、超美人相手なら。







「遅かったやん、お腹痛かった…とか？」


『ううん、大丈夫。元気だよ』


「……、そんな風には見えへんけど、」






ちょっと距離を縮めて、じい、っと顔を見て覗いてくる望くんに、どきりと心臓が跳ねる。

それだけでもう心臓が壊れそうなのに、付け加えて頭に手を置いて撫でてきて。


"泣きそうな顔してる"と優しく微笑む。




……そりゃあ、誰しも落ちるだろうな。

こんなイケメン、可愛い子も誰も、放っておくわけない。

私だって、その惚れた人の1人だから尚更。







「何かあったん？話せる？」






さっきまでの意思はどこ行ったのやら。

今はもう、弱音しか出てこない。


あんな噂聞いた後に、無理やり笑って折れた心の棒を隠す演技なんて私にあるわけない。

重岡の時も、同じだ。

振られた後の動揺も隠せなかった。その後友達としてやり直すとしても、私は立ち直れなかった。



結局は神山とかに助けて貰って……。






「……瀬良さん？」






ただの、私の勘違い。望くんは期待させたつもりはなかったのに、私がただ勘違いして期待しただけ。

結局は、そういうこと。

あー、もう、あれだね。どこ行っても、誰を好きになっても結果は変わらない。






『望くん、』


「…うん？どうした？」


『私、望くんの好き』


「………え？」


『会った時からの一目惚れ。

よければ、私と、付き合ってください』






困った顔をした望くん。

この顔も、何度見てきたんだろう。


頭を掻くその仕草も、なにも言えなくなってごもる口も、全部前と一致する。



そして、口を開く。






『"ごめん、異性として見れない"』


「……っ！」


『"瀬良さんは友達って関係の方が落ち着く。だから、友達でいていいかな"……だよね。ごめんね、望くん、いきなり告白して困らせちゃって』


「っ、え、いや、ちが、」


『何が違うの？一緒だよ。望くんが口を開いて言いたかったのはこれ。全部、わかってるから……本当にごめんね。明日から、友達としてよろしくね』






何度も見た、何度も聞いた。

私は、異性として、見られないんだ。

27.デジャブ？→←25.彼女の噂は。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す