生徒会長の神山くんを、こっそり観察したいJKの話。

2.数学と勉強方法 ページ2

＊





生徒会長の神山くんは、どうやら主婦らしい。






「神山、お前これ解けるやろ」






"解いてみ"と、割と難しい数学の問題を
名指しで神山くんを当て、チョークを差し出す。


さっきまで猛烈に襲っていた眠気は吹き飛び
如何なる活躍も見逃してはいけないと
脳が全身に司令を出した気がした。





神山くんは一切嫌な顔をせず、
"合ってるかわからへんけど"と謙虚。

神山くんが間違えるはずがないと
クラスのみんな、先生までも思っている




それぐらい、学年トップの信頼度は高いのだ。





途中式も丁寧に書き進め、答えに辿り着く。
かたん、とチョークを置いて前へ向くと

先生は嬉しそうに"正解やで"と
ピンクのチョークで花丸を書き加えた。




わかる。私も今すっごく神山くんに
大きな、大きな花丸を差し上げたい。




謎の共感が私と先生の中で生まれた気がして

難しい問題をさらりと答えて席に座る神山くんに
圧倒されて静まる教室内を


私と先生だけが頷き、妙な空気が広がっていた。







＊ ＊







神山くんは、数学を難なくこなす人だ。






「なぁ神ちゃん、これどうやるん？」


「あ、これな……ムズいよな」







数学の授業が終わったあと、
重岡くんはのそのそと神山くんの席に向かい、

さっきの問題か、はたまた違う問題かわからないが
問題集を机に広げて、何やら質問してる。





いいな。
私も"これムズいよな"って共感されながら
数学を教わりたい人生だった。







「これはこうすると……ほら、できるやろ？」


「ほんまや。はー……天才やな、神山は」


「はは、せやろ？」






謙虚でも、たまに冗談で
"天才"を肯定することがある神山くん。


ノリの良さ……完璧だと思うんです。
前々から思ってたんですけどね。






「何したらそんな頭良くなれるん？」


「んー、苦手をそのままにせんことかな。
そのままにしとくとテスト前の勉強とか、
泣きながらやる羽目になるし」


「あー……思い当たる節があるわ」


「せやろ？やからしげも、
苦手は今のうちに無くした方がええよ」


「完璧な返答ありがとう。そうしとくわ」







なんて微笑ましい光景。
まるで母親が子供の勉強を心配しているよう……


そして神山くんの手際の良さ。
問題を教えるのも簡単に、わかりやすくだなんて
どこまでも完璧なんだな


と思いながら、静かに数学を机の中にしまった。

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