62 ページ18
’
凪くんの好きがどういった意味を持つのか、気になったけど今はその余裕がなかった。
胸にあった微かな灯りが、跡形もなく壊されたような感覚。
もうあの写真は手に入らないかもしれないと、悲しむ度にヒナへの悔しさが淡々と込み上げてくる。
あの人は、どこまで私を苦しめたら気が済むんだ……
「A……
こっち、座れる?」
憤りを表に出す気力もなく、凪くんの腕の中で呆然と立ち尽くす私を、彼は労るように椅子に座らせた。
そして自分は床に膝をつき、私の涙をやさしく拭う。
「ごめん……強いこと言ってごめん。でも、このままには出来なかった……」
『……ううん。凪くんは、正しいと思う
このままじゃ私、一生後悔してたかもしれないし』
向き合わなきゃいけないのは、過去でなく未来
お母さんだって、自分のために彼女の言いなりになった私を見たら悲しむはずだ。
『だから……ありがとう、凪くん』
二人きりの写真はきっともうないけど、お母さんだけの写真ならどこかにあるかもしれない。
それこそ、叔父さんが持ってるかもしれないし。
大丈夫。私には生きるべき明日がある。
私が生きている限り、お母さんはずっと思い出の中で生き続けることができるから……。
「……ヤバい」
さっきまで痛いというほど私を見つめていた凪くんが、ふいっと顔を逸らす。
『どうしたの?』
「なんか、めっちゃ触りたい」
はぁあ?と素っ頓狂な声が出た。
せっかくあったかい感じだったのに……何を言い出すんだこの人は。
ていうか前もそんな感じでキスされたし、凪くんもどこでも盛っちゃうタイプなの?
ま、まぁ健全な男子高校生だもんね……
「いい?」
『だ』
「ダメに決まってんだろ」
むぐ、と横から伸びた手に凪くんの口が抑えされる。
2604人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ブルーロック」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ごりらに憧れてます - ちょっと控えめに言って神です。語彙力めちゃ高ですし……小説家なれると思います。応援してます!!最高でした〜 (1月19日 7時) (レス) @page43 id: 930e13de40 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 話の構成が上手すぎて引き込まれました…!神作品を有難う御座います! (10月10日 13時) (レス) @page22 id: 96c5df6fb7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨、ときどき猫。 - 私、最後の「彼との幸せな〜」を呼んだ瞬間、大泣きしました。枕に顔うずめてたら親に笑われました(笑)本当に心が温かくなる話でした!これからも投稿頑張ってくださいね! (6月5日 21時) (レス) @page49 id: 5c49e2991a (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - すっごい泣きまた!本当に素晴らしい作品をありがとうございます! (5月21日 0時) (レス) @page49 id: e67944ae95 (このIDを非表示/違反報告)
ヒラコ - 素敵なお話をありがとうございました。ツナさんの暖かい気持ちに感動しました。生きることは決して楽しいこと、美しいことばかりではないけれども、それらはいつか糧となり実を結ぶのだと思います。私もいつか生きていて良かったと思える日が来るよう今を生きます。 (2023年4月2日 2時) (レス) @page49 id: 488b484064 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ツナ | 作成日時:2023年1月28日 16時