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続けてぺたぺたと、腕やら背中やらを丁寧に確認するような手つきで触りまくった凪くんは、次に私の頬に手を添えて目の下に親指を置いた。

スゥ、と横になぞられるのがくすぐったくて目を瞑る。

かわい。と3文字の音が聞こえたは気のせいだろうか。





「ほら、クマも出来てるし……ねぇ、なんかあった?大丈夫?」


『……えっ、と』





珍しく凪くんが真剣な顔をするから、嘘をつくことに抵抗ができてしまった。
でもここで本当のことを打ち明けたら、それはお母さんを手放すことを意味するわけで





『最近、変な夢ばっかみるからだと思う』





沈黙しかけて気まずい空気を誤魔化すため馬鹿っぽく笑ってみた。

言い訳のレパートリーがこれしかない点に自分の語彙の少なさを痛感するが、人はこういう咄嗟に何か言わなきゃいけない場面で結構嘘か否かを見分けるものだから、平然を装える手札を持っておくのはいいかもななんて変な肯定をした。

手札が変な夢って頼りない気もするけど……。








だが、凪くんは私の予想に反して意外と賢かったというか、人を見抜く力が備えられていたらしい。




「うそつき」




ただ一点を、私の瞳を見てそう言われた。

瞳孔の開き具合でも見てカマかけてるんじゃないかと思ったが、その口調には妙な確信が含まれていて。


あ、誤魔化せないやつだと私を窮地に追い込むには十分だった。





『……』




どうしてそう思ったの?なんて、野暮なことを聞いたら怪しさが増すだけだ。


だが無言は肯定として捉えられる。だから何か言わなきゃなのに、貧弱なボキャブラリーのせいで言葉がでてこない。

やっぱり、変な夢じゃ突き通せないか……





「ねぇ、なんかあったんでしょ?教えてよ……
俺、Aが心配なんだよ」






すがるようにそう言われたら、私は変な手札なんかとうに捨てて白旗を上げるしかなくなってしまった。

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ごりらに憧れてます - ちょっと控えめに言って神です。語彙力めちゃ高ですし……小説家なれると思います。応援してます!!最高でした〜 (1月19日 7時) (レス) @page43 id: 930e13de40 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 話の構成が上手すぎて引き込まれました…!神作品を有難う御座います! (10月10日 13時) (レス) @page22 id: 96c5df6fb7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨、ときどき猫。 - 私、最後の「彼との幸せな〜」を呼んだ瞬間、大泣きしました。枕に顔うずめてたら親に笑われました(笑)本当に心が温かくなる話でした!これからも投稿頑張ってくださいね! (6月5日 21時) (レス) @page49 id: 5c49e2991a (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - すっごい泣きまた!本当に素晴らしい作品をありがとうございます! (5月21日 0時) (レス) @page49 id: e67944ae95 (このIDを非表示/違反報告)
ヒラコ - 素敵なお話をありがとうございました。ツナさんの暖かい気持ちに感動しました。生きることは決して楽しいこと、美しいことばかりではないけれども、それらはいつか糧となり実を結ぶのだと思います。私もいつか生きていて良かったと思える日が来るよう今を生きます。 (2023年4月2日 2時) (レス) @page49 id: 488b484064 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ツナ | 作成日時:2023年1月28日 16時

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