千切豹馬の証言 ページ6
’
「Aじゃん」
彼女の姿を見るとつい口角が上がってしまう。それも一人でいたのなら尚更。
『あ、千切くん』
「よ。こんなとこでなにしてんの?」
流しの下に脱ぎ捨てられているジャージ。白いロンTの袖はなにかの液体で汚れている。
「はは、お茶でも零した?」
『うん、そんなとこ。だから洗おうと思って…』
ドジだよねと彼女が笑いながら袖をまくった瞬間、息を飲んだ。
白く細い腕に浮かぶ、いくつもの傷跡と痛々しい内出血が目に飛び込んできた。
普段の姿があまりにも普通の女子たちと変わらないから忘れていた
こいつが施設の前に倒れていたところを帝襟さんに発見された時、酷い怪我をしていたということを。
全身傷だらけの記憶喪失の少女
一体彼女は、山の中で何をしていたのだろうか。
普通に考えれば、登山などの最中迷ってしまい転落などが挙げられる。
だがこの山一帯にはそういった山登りようのコースなんてないし、隣の山も古くから伝わる土地神がいるからという宗教的な理由で一般人の立ち入りは禁止されている。
『よかった、火傷はしてないみたい』
「…あぁ、ほんと?よかったな」
第一、こんな華奢な身体でどうやってここまで……
『ん?どうしたの?』
肩に手を置く。薄くて頼りない。
こんなんで生きていけるのかなんて心配になるくらい。
男に襲われた時とかどうすんだよ。戦えねーだろ。
「……いや。なんか手伝うことあったらいつでも呼べよ」
『うん、ありがとう!』
無邪気に笑う姿に胸が掴まれる。
かわいいなと口から漏れそうになったのを慌てて止めた。
477人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミルクティー - 泣いた… (2023年3月10日 18時) (レス) @page38 id: e98fa1655a (このIDを非表示/違反報告)
みは - うわあああすきです!!!更新頑張ってください!!!!! (2023年2月23日 11時) (レス) id: 48943adb31 (このIDを非表示/違反報告)
ツリー(プロフ) - うおおおお!!!!あの作品だったのか!!!!これからも応援してます!!! (2023年2月13日 0時) (レス) id: 8393590549 (このIDを非表示/違反報告)
魑魅魍魎 - ヤバイ、、、めっちゃ好きです!! (2023年2月12日 23時) (レス) id: 0529b76d34 (このIDを非表示/違反報告)
危険因子…テスト期間につき更新停止中(プロフ) - 話の流れがめちゃくちゃ好きです…。影ながら応援しています (2023年2月12日 22時) (レス) id: 6eb434b1d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ツナ | 作成日時:2023年2月3日 17時