私には無関心だったのに【五条悟】

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そう、思っていた矢先だった。







A先輩が亡くなった





悟くんが聞いたことないような感情のこもってない声で、でも声帯を震わせながら電話越しにそう告げた。





でもレイラ馬鹿だから、悟くんは何か勘違いしてるんだって、A先輩が死ぬはずないなんて、根拠の無い大丈夫を繰り返しながら悟くんの気持ちに寄り添うことが出来なかった。



悟くんがそんな嘘つくはずがない

自分の目で確かめずに言い切るはずがない


大丈夫なことなんて、何一つない




そんなこと、私が一番分かってなくちゃなのに……



信じてあげられなかった。






いや、頭の半分では信じてたのかもしれない


でももう半分が拒否してた。A先輩が亡くなったことを、認めるなんてできなかった。







だって、だって……






あんなに強くて綺麗でかっこいい先輩が、そう簡単に死ぬわけが無い。何かとてつもないイレギュラーが起こってでもない限り、そんなことはありえない。







「やだ、やだよ……A先輩……！」







悟くん以外で、初めて優しくしてくれたひと。
私は母親の優しさなんてこれっぽっちも知らないのに、A先輩に優しくしてもらうと何故か娘になったかのような気分になれた。悟くんとはまた違う、温かい光で包んでくれる。
調子付いた私が甘えても先輩は嫌な顔ひとつ見せない。A先輩の子供に産まれたかったって言って困らせたこともあったのに。



一緒に買い物に行った時、先輩がいい香りって言ってた香水は今でも使ってる。これを身に纏うと、いつも先輩がそばに居るように思えたから……



実際は既製品なんかで先輩のやさしい香りは生み出せない。
けどどうしても何かに縋りたかった私は、少し雰囲気が似ているこの香水でさえA先輩に無理やり重ね合わせていた。






それがいつしか私の香りとして定着化していて、

その頃先輩からは全く違った柑橘系の香りがするようになった。

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