私には無関心だったのに【五条悟】

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……いや、違う

悟は、私に対して嘘をついたことがない。どんなにキツい口叩いても、嘘だけはつかれたこと無かった。
レイラちゃんのことだって言いこそはしないけど、決して隠そうとはしてなかったし。











いつも冷たかったのは、裏を返せばいつもありのままだったということ。



ずっと、昔から。









悟は、誰に助けを求めてきたんだろう








もしかして、私だったの……？










……なんて、違うよね。
きっと脳が自分に都合よく解釈してショックを和らげようとしてるだけ。









"確かにアイツは生粋のクズだけど、お前といれば大丈夫なんだと思う"





ううん硝子。大丈夫なんてこと何も無かった。
喧嘩ばっかだったよ……





"君たちもう十何年の仲なんだろ？なのに未だに喧嘩できるなんて……私はある意味凄いと思うよ"





凄いって何が……？分かんないよ、教えてよ夏油くん。今どこにいるの





"悟くんは私には素を見せてくれないから……だから、A先輩のことはきっとすごく信頼してるんだと思う"




違う。信頼されてるのは、頼られてるのはレイラちゃんの方……









私じゃない


私じゃ支えてあげられない













「痛っ」



あ、ヒールが……



ポッキリと折れた拍子に足もやってしまったみたいで、鈍い痛みがジンジンと伝わる。







前にも同じようなことがあったっけ。
私がヒールを折った帰り道、もう近くのお店は全部閉まっちゃってて、仕方なくそのまま帰ろうとしたら




"馬鹿。お前みたいな鈍臭女がそんなん履いたら骨折すんだろ"





って言って、自分の靴を私にくれたんだ。


悟の靴はブカブカすぎて歩きにくかったけど、でもおかげで怪我することは無かった。




いつもはうるさいくせにそういう時だけは黙るから、こっちもペースを崩されて……



転びそうだからって掴まれた手を、握り返してしまった。






柄にもなく、手を繋ぎながら帰った










喧嘩して私が出てったのを探しに来てくれた時も


飲み会に付き合わされた悟を迎えに行った帰りも


実感の集まりが苦しくて2人で逃げ出した日も









そんな夜は決まって、無言で手を繋ぎながら帰った。








かと言って仲が良くなるわけじゃない



でもあの夜だけは、お互い素直になれてた気がする。

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