やさしく蝕んで【諸伏景光】

愛ゆえだからね ページ3

’



｢Aちゃんもう立てないだろうから、僕が抱っこしてあげる｣

『やめっ、おろしてっ』

｢ふふ、可愛い｣




そのままお風呂で1回、足が床につかない状態で揺すられた。
この体勢は辛いから嫌だって言ってるのに、毎回させられてしまう事も悔しくて涙が出てくる











やっとの事で解放された時には、外はもうオレンジ色に染っていた。




｢今から買い物行ってこようと思うんだけど、Aちゃん何食べたい？｣




全身の倦怠感に腰痛でボロッボロな私に比べ、彼はよくもまぁこんなピンピンでいられるものだ。
今もひょっこり寝室に顔を出しながらシャツのボタンを止めている。




『……ハンバーグ……ポテトサラダつきで……』





朝からまともに食べてないのだ。プラスカツ丼位は余裕で食べられちゃう。





｢ははっ、りょーかい。じゃあちょっと行ってくるね｣







とことこと寝ている私の元へやってきた彼は、私の頬に優しい口付けを一つ落とした。







｢今日も大好きだよ。A｣





『いいから……っ、お腹すいたよ』





｢あはは、顔真っ赤。可愛いね｣






じゃあ行ってくるね、と私の布団をかけ直し、ベットサイドに水が置かれる。
着替えも全部、新しいのが用意されていた。



まったく、ほんとにほんとにタチの悪い男だと思う。

酷くいじめる癖に、それが愛ゆえだというのだから嫌いになれない。
でもよく考えてみれば、私を抱き潰す所だけを除けば寧ろ彼はいい男なのかも。
基本的には優しいし、絶対暴力はしないし……
あとは可愛いし料理も上手だし家事は全部やってくれるし、私がお願いすればどこへでも連れてってくれるし
あと普通にかっこいい。顔はどタイプを貫いている。
だから彼は、本当はっていうか根は良い人なのだ多分。
ただ、私に対する愛のかけ方が少しズレてるだけ……








｢ただいまAちゃん、見て見てっ桃買ってきたよ！桃好きでしょ？｣

『え、桃？うん大好きだよっ』







そう思ってしまう時点で、きっと私もいくらかズレているのだと思うけど。

疑われるなんて心外だな→←お仕置だもん酷くしなきゃ

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