【完】ゑ？あの灰谷蘭が童貞だって！？【続】

手紙 上 ページ6

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脱どーてーの灰谷君へ


今日はなんだか不思議だけどね、突然記憶が戻ってきたの！だから忘れないうちに、大好きな灰谷君へ手紙を書きたいと思います。

突然ですが明日、私はこの街を離れて福井にある大きな介護施設へ入居します。やっぱりお母さんが1人で私の介護をするのは大変なので、プロに任せることにしたんだとか。なぜ福井なのかと言うと、福井にお母さんの実家があるからなんだって。

お母さんには何度も謝られたんだ。育てられなくてごめんね、今までごめんねって。謝られた時、私は嬉しいような悲しいような複雑な気持ちでした。今まで私と一虎にしてきたことは許されないことだし、謝るくらいならまだそばにいて欲しかった。お母さんは心の弱い人だから、私が段々弱る姿を見るのが辛くなっちゃったんだと思う。あとこれは予想に過ぎないんだけど、多分お母さんはもう二度と、私の前には現れない気がするんだ。やっぱり、子供に忘れられるって辛いもんね。

それはさておき、灰谷君に謝りたいことがあります。
突然の旅立ち、本当にごめんなさい。多分私は明日、灰谷君に何も言わずに東京を出ます。
それともうひとつ。私はこれから12年間、灰谷君には一切会わないようにしたいと思います。なんで12年なのかというと、アルツハイマーの人が発症後生きていられる期間の平均が、最長で12年だそうだから。
なので私は、弟にこの手紙を託しました。12年後、必ず灰谷君へ届けて欲しいって。
弟に灰谷君の住所を教えちゃうけど許してね。


それと、私がどうして12年間灰谷君と一切会わないようにしようとしたのか、ちゃんと説明したいと思います。
言葉にしようとすると難しいんだけど、はっきり言ってしまえば、灰谷君にこれ以上醜い姿を見られたくない。という私の勝手な心のせいです。
どういう事かと言うと、このままこの症状が進んでいけば、食事や歩行はもちろん、排泄の仕方まで忘れてしまうかもしれないそうなんです。
それを知った時、私は絶望しました。大好きな人にそんな姿を見られるくらいなら、もういっそ傍を離れた方がマシだと。
灰谷君はこのことを鼻で笑うかもしれませんが、私にとってはとても重要なことなのだよ！
やっぱり大好きな人には、綺麗な姿のまま覚えていて欲しいから。
寝たきりで喋れなくなって、トイレにもいけないような姿を見られなくないんです。そんな姿を、私の最期として覚えて欲しくなかったんです。
大好きだから。灰谷君が。

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