幼馴染に彼氏を奪われた【佐野万次郎】

episode28● ページ29

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それから数年が経って、段々と虐待も落ち着いてきたと思っていたある日



珍しく親父の機嫌を損ねてめいっぱいに殴られた絹が、腫れた顔に鼻血を出して俺に頼んできた。｢助けてくれる……？｣と。


その時の姿があまりにショッキングすぎて残酷すぎて脳裏にハッキリと焼き付いて、今でも忘れられていない

それもあり、絹の頼み事は断りづらかった




そしてその頼みを受け取った俺は、絹と一緒に絹の住むアパートに向かった

俺はその頃から蹴りには自信があったから、大の大人でも、俺一人で余裕でやっつけれると思っていた

その余裕が油断を招いたのだ。



玄関から出てきた父親に、早速虐待の事を問い詰めると、最初ははぐらかしていたが徐々に本心を見せてきて



危険を察して飛び蹴ろうとしたその時



｢テメェみたいな弱ぇガキがしゃしゃんな！｣


気がついたら俺の体は宙を舞っていた





後から聞けば、絹の父親は昔ボクシングをやっていたらしい



その強烈なパンチにすっかり意識を失っていた俺は、目が覚めた時には廊下に追い出されていて



慌てて絹の家のドアを開ければ



血だらけで傷だらけで、複数の箇所を骨折していて今にも死にそうな絹が玄関に倒れていた



ガキの俺から見ても、その傷は完全に治るとは思えない程だった



普段ここまで怪我させられる事は無かったのに、こうなってしまったのは間違いなく俺に相談した事がバレたから。


問い詰める前に、親父がドアから出てきたところを蹴飛ばしておくんだった。

自分がこの世で1番強いと思い込んだせいで油断した


俺のせいで、絹は心にも体にも、一生癒えない傷を負ってしまった

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