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episode26● ページ27






「ねーマーくん、マーくんの後ろ乗せて?」





こてん、と首を傾けて上目遣いでおねだりしてくる絹


昔から俺は、この顔に弱かった





というのも……



腫れた顔に血と痣だらけの体で、「助けてくれる……?」とあの時お願いされたのを思い出してしまうから。



それがこの姿と重なって、いつしか俺は絹にその顔で何かを頼まれたら、可哀想だから助けないと。という同情心が湧いてしまって頼みを断れなかった



一方で、Aなら分かってくれるだろうと彼女に甘えていた部分もあった。



絹とは違って、普段から大人で落ち着いているAなら、絹を後ろに乗せたくらいじゃなんとも思わないだろうって。



それがいけなかったんだよな、全部

Aは神様なんかじゃない。普通の女の子だったんだ

俺が何も話さないでいて、Aに伝わるはずなかったのに。

勝手に大丈夫だって決めつけてた。


Aの事、全然考えられていなかった






「うっわぁ……!マーくんの後ろに乗るの久しぶり!」






幼い頃、家庭環境のせいで笑顔を見せることのなかった絹が、笑顔になれるならと安心して




「今日はどこ行くの?マーくん」

「ん〜、絹の行きたいとこ」




親にどこにも連れて行ってもらえなかった絹の事ばかりを考えていて





「プリクラ?お前1人で撮れよ?」

「やだよ、マーくんと一緒にとるの!」

「はいはい、分かったよ撮ればいいんだろ」





やりたい事を、口に出すのすら許されなかった絹の事ばかりを優先して、






「あっ、でもそういえば私のお母さんがマーくんに会いたがってたんだよね」


「あー、それ明日じゃダメ?」


「今日がいいって……マーくんの分のご飯も用意してるだろうし」






ここで断ったら、絹が後で母親になんて言われるのだろうと怖気づいた俺は、






「悪ぃ……今日はケンチンに送ってもらうんでいい?」




「…うん、全然大丈夫」






その天使のような優しさに甘えて、







「ごめんね龍宮寺君、お願いしてもいいかな」






Aのこと、全然見れていなかった



あんなに寂しそうな声してたのに、



何も気づけなかった





彼氏失格だ、俺

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ジウ - 泣ける、、、_:(´ཀ`」 ∠): (2月23日 15時) (レス) @page18 id: 30bb11d55f (このIDを非表示/違反報告)
光 と 闇 - ちょっと怖かったです・・・。悲しくて、泣けます。 (2022年12月10日 2時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
杏子 - めっちゃ泣きました…でも絹って人ラブコメの良い役目を果たしていてちょうど良いラブコメでした頑張ってください!夢主ちゃんとマイキーが仲直りして幸せになるまでずっと見届けてあげたいです!お体気をつけてください! (2022年9月17日 14時) (レス) @page46 id: cca27223f2 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。 - 小説で泣いたの初めてです……泣 (2022年7月14日 17時) (レス) id: 8fcd36f022 (このIDを非表示/違反報告)
星空(プロフ) - 小説で泣いたの久しぶりなんだけどぉぉぉ!!・゜・(つД`)・゜・ (2022年1月3日 7時) (レス) @page47 id: 6329fbc5cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ツナ | 作成日時:2021年8月3日 19時

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