ピエローtwoー (ページ42)

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88時間目ページ42

「大きな敗北を知らなかったカルマ君は、期末テストで敗者となって身をもって知ったでしょう。敗者だって自分と同じ、色々考えて生きている人間なんだと」

それに気づいた者は必然的に、勝負の場で相手のことを見くびらないようになる。自分と同じように敵も考えていないか、頑張っていないか。敵の能力や事情をちゃんと見るようになる。

「敵に対し、敬意を持って警戒できる人…戦場ではそういう人を、隙がないというのです」

隙がない…か。赤羽君にぴったりだ。

「1度の敗北を実に大きな糧にした。君は将来大物になれます」

殺せんせーが赤羽君の背中を見ながらそう言った。

「…大した奴だ少年戦士よ。敗けはしたが楽しい時間を過ごせたぬ｣

殺し屋も負けを認めたのか、吹っ切れた様子で言う。

「え、何言ってんの？楽しいのはこれからじゃん｣

赤羽君は笑みを浮かべ、そ両手にわさびとカラシのチューブを持って殺し屋に近づく。

「何だぬ？それは」

「わさびアンドからし。おじさんぬの鼻の穴にねじ込むの。さっきまではきっちり警戒してたけど、こんなに拘束したら警戒もくそもないよね」

…………。

「これ入れたら専用クリップで鼻塞いでー、唐辛子の１０００倍辛いブート・ジョロキアぶち込んで、その上から猿ぐつわして処置完了」

おじさんぬさん、可哀想に…。

「さぁ、おじさんぬ。今こそプロの意地を見せる時だぬ｣

殺し屋のくぐもった悲鳴が響いた。その様子に全員の顔が引き攣る。

「殺せんせー…。カルマ君特に何も変わってなくない？」

「…えぇ。将来が思いやられます」

苦笑いしながら赤羽君を眺めているとふと彼がこちらを見た。目が合い、すぐに思いきり逸らす。

『(…ああ…何やってるんだろう)』

彼が悪いんじゃない。私が勝手に怒っているだけだ。

そんな権利なんてない癖に。