ピエローtwoー (ページ29)

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75時間目ページ29

目的地は島。東京から船に乗り、数時間かけて離島を目指すのだ。

私はデッキに出て景色を眺める。辺り一面が深い青。そして香る潮の匂い。何も考えず、ただ海ばかり見ていた。

「何かあるの？」

声を掛けて来たのは赤羽君だった。

「ずっとそうしてるけど」

『いえ、何もないんですけど…。海の近くに来たのも、見るのも初めてだから』

「…水の中に入れなかったから？」

私は返事の代わりに頷いた。

『ずっと来たいと思ってたので…。何だか色々…胸が一杯で』

「…そっか。良かったね」

『…はい』

良かったのだろうか。私だけ…海に来て。

なんて考えが浮かぶが、すぐに頭から振り払う。今はこんな事考えている場合ではない。

『やっぱり海の水はしょっぱいんですか？』

「そーだよ。後で確かめてみる？水かけたら分かるかもよ」

意地悪そうな顔で笑う赤羽君。私は思わず苦笑いする。

『やめときます。なんか企んでそうなので』

「それは残念」

暑いし戻ろう、と言われ私は静かに頷いた。

ー

その後客室の中に戻ると、殺せんせーが船酔いで死にかけていた。その様子に赤羽君と目配せする。

『船酔い…暗殺に使えそうですね』

「ね、てか今殺せたらいいんだけど」

目線の先で殺せんせーは船酔い状態であるにも関わらず、器用にナイフを躱していた。ここで殺すのは無理そうだ。

「にゅやぁ…船はやばい…船はマジでやばい。先生、頭の中身が全部飛び出しそうです」

黄色い顔が今は真っ青になっている。見ていられなかったので、一応水をあげた。弱々しい声でお礼を言われる。

「！、起きて起きて殺せんせー！！見えて来たよ！」

陽菜乃ちゃんの言葉に私もつられて外を見る。

「東京から６時間。殺せんせーを殺す場所だぜ！！」

「「「島だーーーっ！！！！」」」