春の霞は晴れ ページ9
遠くの景色が、霞がかって見えにくかった。
「時透」
名を呼ばれ振り向くと、よぉ、と手を上げ笑う宇髄さんがいた。
「……何か用ですか」
「一緒に行こーぜ。どうせ行き先は同じだろ」
有無を言わせず隣に並び歩く宇髄さんに溜息を吐く。隠すつもりもないそれに、宇髄さんは苦笑いを溢す。
「足はもう良いのか?」
「たまに少し痺れるだけです。問題ありません」
その後、数分歩けば目的地の場所に着いた。
とある墓の前。
そこには、高梨Aと刻まれている。
「…まだ信じられねぇよ」
宇髄さんはしゃがみ込み、持っていた花を添え、手を合わせてからそう独りごちた。
「Aの顔や声が、普通に思い出されるのにな」
「…狙ってたんですか?」
「はあ?違ぇよ。Aは可愛い後輩ってだけだ。そもそも、むいくんむいくん言ってる奴を振り向かせるなんて無理に決まってんだろ」
宇髄さんの口から''むいくん''と言われるのは正直嫌悪感を抱いたが、表情には出さない。
「ほんと…死ぬなよ。まだ褒美もあげてねぇのに…」
温い風が頬を撫でた。何とも言えないそれは、より僕等を感傷的にする。ふぅ、と息を吐いてから、刻まれたAの名前を再度見つめた。
「また来る」、そう言い残してから去ろうとする僕を宇髄さんが見上げる。
「もう行くのか?俺に遠慮しなくても…」
「産屋敷邸に招集がかかってるので」
遠慮などしない。が、招集がかかっていなくてももう去るつもりだった。
Aの墓を長時間見るのは、正直耐えられない。
「時透!」
大声に思わず足を止める。
「生きろよ、あいつの分まで」
グッと唇を噛み締める。
その言葉には返事をせず、僕はまた足を動かした。
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憂流(プロフ) - 酔知魔仁さん» 素敵な感想ありがとうございます!作品は書きたいな〜とは思っていますので、また新作でお会いできるといいですね、、! (2022年5月2日 23時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
酔知魔仁(プロフ) - 一気読みしちゃいました…夢主ちゃんが鬼になった時点ですっごいびっくりしちゃったんですけど最後の最後で会えた訳では無いけど会えててめちゃくちゃほっとしました…憂流さんの無一郎くんの作品がまた読めますようにと願いながら待ってます…! (2022年5月1日 13時) (レス) @page15 id: de62c28f20 (このIDを非表示/違反報告)
うに。(プロフ) - 憂流さん» お返事ありがとうございます!めちゃくちゃ誤字が入ってましたね…すいません。そうなんですね!!!すっごく楽しみです!実は今暗殺教室のピエロ読んでます!そちらもすごく面白いです! (2022年1月7日 13時) (レス) id: 7df85f4354 (このIDを非表示/違反報告)
憂流(プロフ) - うに。さん» ありがとうございます!!新作もゆっくりですが考え中ですので、機会があればまた読んで下さると嬉しいです! (2022年1月7日 0時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
うに。(プロフ) - 一気読みしてしまいました(´TωT`)めちゃくちゃ素敵なお話でした。また憂流さんこうの無一郎の作品がみたいです!これからも頑張ってください! (2022年1月6日 16時) (レス) id: 7df85f4354 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2021年4月4日 11時