好き、嫌い、やっぱり愛してる【五条悟】

#14 ページ16

硝子に相談料という名のお煎餅を渡したのに、どうしてか呆れられチョップされたのは昨日の事。

相談も結局当の本人の五条悟と話した事で、する必要はほとんどなくなってしまった。悩んでいた事、それが少し解決した事をAが伝えると硝子は溜息を吐いた。

「はぐらかされたのに嬉しい訳？」

『だって可能性は０じゃないって』

「キープされてね？」

『五条悟はそんなに……』

最低な人ではない…と思って１度、今までの五条の行動を振り返るA。決して優しいばかりではなかった彼の行動に、多分、と心の中で付け足した。

「あれで初心(うぶ)ならウケるけど」

ハッ、と乾いた笑いを溢す硝子にAは首を傾げる。

『…硝子はやけに五条悟に対して冷たいのね』

「親友泣かされちゃ困るしね」

『硝子…』

普段自分に対しても素っ気ないのに。硝子が、今、自分を親友だと。

明らかにニヤつくAに、硝子は呆れた視線を寄越す。

「泣かされたら言ってよ。殴りに行くから」

『硝子が？』

「夏油を使って」

『ふふっ、夏油君はまた損な役じゃない』



そう言って笑い合い、暫く雑談を交わしたのを思い出してAは息を吐いた。


こんな事を考えている暇など無い。言葉とは言えない様なものを発するそれは、一気に現実を突き付けるのだ。


''お嬢様が来る所じゃない''

''すぐに死ぬ''


沢山の人に言われた言葉。それでもここに来たのは、それしか選択肢が無かったからだ。


「オ゛オ゛オ゛オ゛」

『ーッ、！』


帰る家なんて、もう無い。


ﾄﾞｺﾞｯ


「何してんだよ」

『…五条悟…』

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