70時間目 ページ24
『もしかして…このために…』
「Aが喜ぶかなって」
『嬉しい…。すごく綺麗』
ほぉ…と息を吐いて花火を眺める。本当に綺麗で何だか現実味がない。
『カルマ君と見れて嬉しい』
「うん、俺も嬉しい」
A、と呼ばれて横を向く。カルマ君の整った顔がすぐ近くにあった。キスをするのかと思いギュッと目を瞑る。
だけど唇ではなく、髪を触れられている気がして目を開けた。
「葉っぱ付いてた」
『……あ…。ありがとう…』
勝手に勘違いしていた事が恥ずかしくて下を向く。それから、密かにカルマ君を盗み見た。
…今日は手、繋ぐだけなのかな。
今はもう繋いでいない手が何だか物寂しくて、胸の前で握り締める。
「…夏休みもう終わるね」
『…そうだね…』
夏休みが終われば、また頻繁に会えなくなる。…それだけじゃない。
『…カルマ君』
ドロっとした黒い感情が湧き上がり、堪らず口を開いた。
「ん？何？」
『……ううん、何でもない。名前を呼びたくなって』
私の言葉にカルマ君は何それ、と言って笑った。
ー
好きな人といれるだけで幸せな気持ちになれる。
恋って多分、そういうものだ。
少し前にそんな事を思っていたけど…今はどうなんだろう。
「じゃあ…またね」
『うん、ばいばい』
家まで送ってくれたカルマ君に別れを告げて、彼の姿が見えなくなるまで見送る。
そして私はすぐに家の中に入らず、その場にズルズルとしゃがみ込んだ。
『………ぁ…』
おかしいな。
すごく楽しかったのに。幸せだったのに。
どうして…涙が出るのかな。
しゃがみ込んだ側には、既に事切れた蝉の骸が仰向けで倒れていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 320人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - uruさん» うわあぁあああ...辛い泣きたい...あぁ...ぁあああ (2021年2月15日 0時) (
レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
uru(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» やっぱ察しましたか…！とりあえずそれは次回明らかになります！ (2021年2月14日 15時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 久しぶりのコメント失礼します！...なーんか嫌な予感だよ？なーんか、察したよ？オリキャラって言ってください！？ (2021年2月11日 14時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
uru(プロフ) - みつりさん» ありがとうございます！！一番好きだなんて…すごく嬉しいです！！更新頑張っていきたいと思います！ (2021年1月25日 21時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
みつり(プロフ) - 初コメ失礼します！展開が面白くなってきて思わずコメントしてしまいました…！！ピエロといい、少女少年といい、ストーリーが好きすぎます…業オチの小説で一番好きです！これからも更新陰ながら応援してます！！ (2021年1月24日 21時) (レス) id: 9454e35235 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：憂流 | 作成日時：2020年11月3日 13時
