私の夫は浮気性 (ページ9)

今日:24 hit、昨日:35 hit、合計:5,258 hit

8話ページ9

貴方side

湯浴びを終え、白くんの部屋へ行くと、白くんは先に横になっていた。
私が部屋に入ってきたことに気がつくと、布団を上げて、隣に来いと合図をくれる。

私は白くんと向かい合う形で横になった。
白くんは私に優しく布団を被せ、私の背中に手を回した。

『…』

お互いの心臓の音が聞こえる距離。
億年も共にいるというのに、少し緊張してしまう。

白くんは九つも目を持っているのだから、こんな暗闇でも、私の顔が火照っていることくらいお見通しなのだろう。

私は少しでも抵抗しようと、そうそうに目を閉じた。

白澤「…A」

『…』

白澤「…もう寝ちゃった？」

寝てはいないのだが…
狸寝入りをした手前、なんだか言葉を発するタイミングを失ってしまった。

白澤「…Aは…いつも笑ってくれるね」

『…』

これは…白くんの独り言だろうか？
それとも、私が寝たフリをしていることを見透かして、からかっているのだろうか？

白澤「会うのは1年ぶりだってのに…全然変わらない」

白くんは私の背に当てていた手を動かし、私の頬にそっと当てた

白澤「次に会えるのは何年後かな…百年会えないときもあったよね」

『…』

白くんの声が震えている…
手も心做しか強ばっている

私はいたたまれなくなり、そっと目を開けた

白澤「なんだ…やっぱり起きてたんじゃん」

『そういう白くんは、酷い顔をしていますね』

目が暗闇になれた今なら見える
白くんの今にも泣き出しそうな、迷子になった子供のような顔…

白澤「Aっ…」

『！』

突然抱きしめられ、白くんの涙を拭おうと伸ばした手が行き場を失ってしまった。

そんなことはお構い無しとでも言うように、白くんは私をギュッと力強く抱きしめる。

白澤「行かないで…」

『！』

白澤「行かないでくれ…A…ずっと側にいるって約束…忘れちゃったの…」

『…』

ずっと側にいるって約束……か

『忘れるわけないですよ』

白澤「なら離れないで…一緒にいてよ…僕を1人にしないで…」

私は行き場を失った手を、白くんの背にまわし、優しく抱きしめた

『大丈夫…明日になればそんな感情は忘れているから』

花街に行って、女の子と遊んで、鬼灯くんと喧嘩して、側には桃太郎くんもいる
孤独とは無縁の、騒がしくも楽しい日常が待ってるから

もうすぐで、私の存在なんか…忘れさせてあげるからね