２人の神と天使の話。【イナオリ】 (ページ5)

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神を名乗る者。ページ5

きままな昼下がり。
正確には昼下がりよりも前で、昼なりかけくらいだけど。

くだらないことを考えながら、ぼんやりと空を眺める。流れていく雲を見たり、時々間違えて太陽を見ちゃったりしながら時間が過ぎるのを待つ。

ふと、起き上がってみると視界にわけわかんない髪型が映った。癖っ毛なのだろうか。もしかしてあれがセットしてるって感じなのかも。興味深く髪型を見つめた後、ようやく顔を見た。

桃色の瞳に、水色のマークが顔に入っている。
そういえば昔、似たような子を見た気がする。まぁ、喧嘩が強くてでも寂しそうな子だったってことしか覚えていないけど。
その子なら面影を感じながらまたじっと彼を見た。特に意味はなかった。

意味はない。
それに、人から私たちの姿は見えない。
そう思ってた。
教わっていたはずだった。

今、彼の目が私の目を見た。
本当に一瞬だった。
私がすぐに顔をそらし、驚きのまま瞬いたからだ。

なんで、なんで見えるの。
こんなの異例だった。
私が取り敢えず身を引こうとすると彼の手が私に伸ばされた。見えるとしたら触れてしまうのだろうか。そんな考えが私の目を強く閉じさせた。

しばらくして、何も感じない中で目を開けた。彼は私の後ろにいた蝶に手を伸ばしていた。

なんだ、勘違いか。
さっきの視線もきっとそうだ。

そう思うと安心し彼に感謝の気持ちが湧いてきた。初めての感覚だった。きっとあの勘違いがなければ絶対に巡り合わない感情だった。
私は素早く手を重ねた。

「あなたのもとに、神の幸福が訪れますように」

実はそれが逃げだってことはわかっていた。
だがそう言い聞かせないと私は何か、間違えてしまいそうだった。
手を伸ばしてしまいそうだった。

私はそうしたいんじゃない。
それは、私の弱さだ。

そういえば今思い出した。
彼は確か、ふぃーるどという場所で神を名乗っているんだった。
あんなのは神様なんかじゃない。
神様はもっと色々凄いんだから。

そう思いながらもどこかまだ気がかりだった。
それでも私はなるべく遠くに行こうと走り出した。