第８話 大声の主 ページ10
『やっほぉぉぉぉおおお！！！』
「うおわぁぁあ！？」
突然の大声に明日人は驚きの声を上げた。他の何人かも同様に耳を塞いだり、唖然と瞬きを繰り返したりと状況の判断が遅れている。
「おい煩ぇぞ！何考えてやがる！！」
灰崎がすたすたと少年の方に歩いていくのを見ながら野坂も珍しく目を瞬かせた。
すぐ近くにいた西蔭も、煩ぇな、と珍しく舌打ちまでしている。野坂は何かを察したように俯くと、西蔭を呼んだ。
「西蔭、さっき何が聞こえた」
「なにって、あいつが叫んだんですよ。野坂さんの知らない間にフィールドに入り込んで、挙げ句の果てに騒ぎ立てるなんて……俺、ちょっと行ってきます」
「まぁ待ちなよ西蔭」
西蔭の肩を引いて止める野坂に西蔭は不満ながらに振り向いた。彼以外のメンバーもこの騒ぎには少々意見があるようで少年のいる場所へと人が集まっていく。野坂は、やはりと心の中で呟きながら自分の前で眉間を寄せた珍しい顔をする西蔭の前に出て微笑んだ。
「僕も行く」
付いてきて、と野坂が言うとすぐに、はいと言う真剣な声が返ってきた。
２人が少年のいる場所までつくと、そこにはもうすでに人だかりができていた。皆々少年を取り囲み、口々に文句を言ったり質問したりの好き放題な状態になっている。明日人が真っ先に野坂に気づき声をかけると質問の声は一時的にやんだ。
「やぁ」
『……』
「おい、お前何者だ。どこから来て何をしに来た、言え」
西蔭の言葉に少年は笑った。黄緑の瞳が笑みで細くなる。見慣れない色のユニフォームに身を包んだ、自分たちと同じか、もしくは小さい少年。だがその顔は少年と呼ぶには大人びていた。
『言ってもいいけど。ちゃんと通訳してね。僕の言葉は彼らには聞こえてないだろうから』
「どう言うことだ」
『隣の人にでも聞いたらわかってくれるだろうよ』
野坂の方を見て答える少年に対し、西蔭は複雑そうな顔で野坂を見た。
聞こえていない？そんなことがあるのか？
西蔭の頭の中に馬鹿げた結論が浮かんでかき消えた。そうだ、幽霊だなんてありえない。
西蔭はそう思いながら野坂に声をかけようとした。だが野坂は予想に反してその場でしゃがみ少年の腹のあたりを見ると、よろしく、と声をかけた。
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作者名：匿名の人。 | 作成日時：2019年12月6日 19時
