第６話 野坂の疑問 ページ8
やや短めに設定された試合時間の終了まであとわずか、時々動きが鈍るところはあっても俊敏なパス回しとシュートは衰えることなく続いた。
「シャイニングバード！！」
前線に出ていた明日人の攻撃が円堂が守るゴール前に迫る。円堂も風神雷神を出しその攻撃を防ぎきると、最後まで諦めるなという言葉とともに一番攻撃に転じるのが早いヒロトへと再びボールを投げた。
「そうだ！このゴッドスト」
『もらっていくね』
ヒロトに向けて投げられたボールはいつの間にそこまで移動したのか、明日人が軽やかに奪い去っていた。反撃が敵の追撃へと変化する。
円堂に向き直る明日人が再び先ほどと同じように必殺技を発動させる。
『シャイニングバード』
落ち着いた声色で放たれた技がまるで陽光が一直線にさすように、真っ直ぐボールはゴールへと向かっていく。円堂もすかさず、風神雷神で対抗する。
先ほどよりも早くボールの回転は止まり円堂がボールを手にすると同時に、試合終了の合図がなった。
『ふぅ、やっぱり円堂の守りは硬いなぁ』
そう口にするのを聞いた円堂はどこか違和感を感じながらも試合終了の音をぼんやりと聞いて、あの少年の姿を探していた。ペンギンのくだりから全く姿が見えずいったいなぜそこにいたのか分からずじまいだったのが、気がかりだったのだ。
「明日人、凄いシュートだったな！」
「嗚呼、新技の練習か？」
ベンチにいた万作とフィールドで技を間近で見ていた氷浦は興奮するように明日人に詰め寄った。少しぼんやりしていた明日人が、なんのこと、と呟き目をこすった。
「最後のシュートだよ。いつもと雰囲気違ったからな」
「……なんのこと？っていつの間にか試合終わってる！どっちが勝った！？」
「え、ど、同点だけど」
「っくぅ、やっぱり最後シュートしとけばよかったなぁ」
万作たちが頭をひねっていた時、野坂と灰崎も同様の話をしていた。
野坂は先ほどの灰崎のパスについて疑問があるようで、直々に彼を呼び話を聞くことにしたのだった。
「灰崎君なんでさっきパス出したの」
「あ？いつのことだよ」
「君が丁度こけそうになったところ」
「見てやがったのか！」
悪趣味が、と悪態ずきながらも灰崎は少し俯く。だが、やがて腑に落ちないように頭をかいた。
「覚えてねぇっていうか、思い出せねぇ」
ぼんやりしすぎだな、と苛立つような顔をする灰崎の顔に野坂の疑問は増えるばかりだった。
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作者名：匿名の人。 | 作成日時：2019年12月6日 19時
