【イナオリ】新人さんは、幽霊さん【男主】 (ページ3)

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第１話特訓ページ3

サウジアラビア戦を終え、イナズマジャパンはさらなる特訓を開始していた。
技の特訓、基礎練習、対戦国の情報収集などできることを精一杯にこなしていた。

ふと、その練習をしている１人だった円堂に剛陣が話しかけた。

「円堂さん、俺のボール受けてください」

円堂も特に誰かと練習をすることもなかったため、剛陣の頼みを快く引き受けた。剛陣はこれまで試合に出ておらず、必殺技を持て余していた。其れもあったか息巻くように鼻息を荒くするとボールを持って走っていった。

「よし」

円堂がゴール前に構えるとふと目の端に見慣れない姿が映った。
黄緑色の瞳。
見慣れないユニフォームに身を包んだやや背の低い少年。イナズマジャパンの追加選手等ではないだろう。しかも平然とそこに立っているのに他のメンバーは誰一人として少年に声をかけることはない。

「おい、そこのおま……」

言い切るより早く少年は円堂の方へと走り出した。慌てて其れを避けようとするも少年はスピードを緩めることなく迫ってくる。

ぶつかる！

円堂が咄嗟に身を守ろうとするとあろうことか、少年の姿は円堂をすり抜けた。驚愕に目を開いたが円堂の意識は少年が通り抜けるとともに薄れていく。

(なんだ、これ。まるで自分の中に別の誰かが入り込んだみたいな)

円堂がそう思っていると、剛陣がシュートを放った。風を切る音が迫ってくる。すぐに構えてとめなければと思い、体勢を変えようと円堂がボールの方を向いた。

向いたはずだった。
円堂は確かにそうしようとしたのだ。
だが、その意識に反し身体は動かない。
そうこうしているうちにもボールは円堂めがけて駆け抜けている。
ボールが当たると思ったその一瞬、円堂の意識は再び遠のいた。

最後に円堂が感じ、聞き取ったのはなれない片足への衝撃と跳ね返ったボールの音だった。