何も知らない (ページ10)

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番外編：年明けページ10

先程の炭治郎に危うく判定がかかったが、長男のきょとん顔に立ち向かえる強者なんていなかった。是非ともこれが果たして惚けているのかはたまた本当なのかに判定を入れてほしい。

『これキリ無いね？てか喧嘩始まる前に喧嘩止めないでよ善逸』

「えぇ俺が悪いの！？！？！？」

「………あ。」

『はい善逸負けー』

「善逸、ごみの処理お願いな！」

「お前四回目だぞ」

「クッッッソが！！！」

かくして長きに渡ったしりとりに無事、負けた善逸がごみを運び終わるのを駄弁りながら待つ。余談だが失敗した回数は私と炭治郎が一回ずつ、伊之助が二回、善逸が四回で圧倒的善逸な勝敗になっている。後もうこの人達はこのままで良いと思う。だってそろそろ年越すよ？起こしたら面倒だから起こさないけども。

「ただいまぁ～」
「あ"～～もう疲れた～～A膝枕してぇ」

『本当に膝で良いのなら』

「ねぇ俺知ってるよ？それ真面目な膝でやる気なんでしょ？太股に辿り着かせてくれないんでしょ？」

善逸の目が本気過ぎて気持ち悪い。そう思っていたのは私だけではなかったらしく、炭治郎が善逸を腐った生塵を見るような目で見ていた。多分炭治郎だったらどれだけ生塵が腐っていても表情一つ変えずに処理するだろうから善逸はそれ以下ということになる。凄いな善逸。

「なぁなぁ花子、いつ年明けるんだ？」

『違う人だよ伊之助』
『うーん…えっあと一寸しかない！！』

「えっ本当に？？」

「起こさなくて大丈夫かな…」

いいよもう、なんて言いながら壁にかかった時計の前に皆で座る。普段の生活が生死の境にあるような毎日を送っていると思うと、こうしていられる時間が物凄く幸せに感じる。

つかさっき善逸私を疑いの目で見たよね。絶許。

新年を前にくだらない争いを始めた善逸と伊之助を横目に、隣に座る炭治郎の横顔をちらっと盗み見る。否、正しくは盗み見ようとしたのだが、何故か炭治郎も此方を見ていたようでおもくそ目があってしまった。

驚いてそのまま目を合わせていると、炭治郎に距離を詰められてしまい、気付いたときには端正な顔が至近距離に。流石にこれはまずいと思い、後退しようとすると体を支えていた両手に炭治郎の両手を重ねられてしまった。

つまり、座っている私に炭治郎が半ば覆い被さるような形になってしまっている訳で。

首や耳が熱くなっていくのを感じるといよいよ危機感を覚えたが、体の軸をやんわり抑えられているのでどうにも動けない。