何も知らない (ページ28)

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二十三度目ページ28

どよーん、効果音がつくならそんなところ。

『…スマホ忘れた…』

「あんたほんと学習しないね」

始業式の日、私はここ数年間スマホを忘れ続けている。なぜか。知らん。

なんでかな、終業式は忘れないのに。

式自体は終わったけど、問題はこれから。

二者面談、担任との話し合い。

進路指導だ。

『だぁかぁらぁ〜〜〜〜〜〜、

ここに決めたんだってば！！！！！！』

「なんッッッでそうなんだよ！！！！！」

私は出席番号的にはそうでもないはずだけど、先生の策略で一番最後に回されている。

この担任、私と三年間過ごしてきた中で一体私の何を見てきたんだ。

「ッハァ………お前俺の話聞いてた？」

『私が聞きたいんだけど？？？』

だから結婚できないんだよ、とぼやくと持ってる資料で頭を叩かれた。PTAに訴えるぞマジ。

『なに、何が嫌なの？』

「なんで俺が駄々こねてる見てえになってんだ！！！」

『いッてぇなお前教育委員会ナメてんのか！！！』

「ナメてんのオメーだクソガキ！！！！」

この人二回も叩いた！！！！怒りたい！！！！

いいじゃん私がどこ行こうとさあ！！！！

「何が工業だふざけてんのか！！！！ここ今年から普通科なくなったっつってんだろうが！！！

お前クソも興味ねえだろ工業！！！！！」

『ふざけんな駅から徒歩３分だぞ！！！！？

こんなに条件良い高校(とこ)他にねえんだわ！！！！！』

「家探しじゃねえんだよ！！！！！」

かれこれ10分この調子である。

そして今に始まったことではない。今年に入ってから面談となると九割五分の確率でこうなる。

100%じゃないのは一回だけ二人ともクソ疲れてて判断能力低下してたから先生の奢りでそのままラーメン食いに行ったことあるから。

お互い「お前も苦労してんだな」ってなったの。一瞬だけね、そんときだけ。ラーメンはヤバい上手かったからたまに行くようになった。三回に一回会う。

「ハァ〜〜〜〜、埒あかねえよマジで。なんでこんなガキと言い争いなんぞしてんだ俺は。

だから言ってんじゃん俺。東でよくない？って。あそこならほら、西村とか城崎とか、あいつらも行くじゃん。お前の成績なら余裕で入れるし。なんでやなの？」

『…いやまあ、そうなんだけどさあ』

あそこ、雄英近いんだもん。

心の中でそっと呟き、浮かんだ金髪を忘れたくて瞬きをした。