何も知らない (ページ25)

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二十度目ページ25

「んだよ、話って」

早く終わらせろ、とでも言うような顔をしているが、目線は一向に交わらない。

かっちゃんは、なんで私がここに来たのかわかってる。わかってて、わからないふりをしてる。

『かっちゃん、聞きたいことがある』

「何もねえっつったろ」

ほら、わかってるんじゃん。

『…なんもないなら、私の目見て話してよ』

見て、そらさないで。

お願い、なんて心の中でそっと唱える。

かっちゃんは一つため息をついて、ゆっくりと背けていた顔を動かした。かっちゃんの座ってる椅子が、くるりと回って私の方を向く。

「…なんも、ねえから」

はっきりと目を見てそう伝えられる。目に映った赤色は水を打ったように揺れている。

なんで嘘をつくんだろう。

なんもないなんて嘘だ。かっちゃんは私に嘘をついていて、私はそれを理解した。

それで、私がそれを理解していることも、かっちゃんはちゃんと気づいてる。

今かっちゃんは、私に「自分は嘘をついている」と自己申告している。

なんのためか。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿私がこの事に、これ以上首を突っ込まないようにするためだ。

腰掛けていたベッドから立ち上がって、抱きかかえていたクッションをかっちゃんに返す。

かっちゃんママにもらったマドレーヌが入った袋を手にとって忘れ物を確認する。

かっちゃんは私の目を見た。

震える赤色は、私から一度も逸れることはなかった。

牽制された。関わるなって。

初めてのことだった。

お前は関係ない、なんてことを、言葉にせずともはっきりと。

そしてそれを、私は

『…そっか、』

甘んじて、受け入れた。