何も知らない (ページ24)

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十九度目ページ24

ギィ、と小さく音を立てて愛用している一人用ソファーに深く腰を掛ける。

『ッハァ～～～～～…』

手足を動かす力も残っていなかったのでだらしなくぶらつかせ、背凭れに言葉の通り体を預ける。勿論自室なので、人目を気にする必要もない。

真っ白な天井を見上げて、どうしたものかと頭を働かせる。いやいや、私がどうこう出来るとは思ってないけど。

…だけど、私が苦しいとき、彼らはいつだってどうにかしようとしてくれていた。

かっちゃんは嫌なことを全部忘れてしまえるようにと、手をひいて連れ出してくれた。

出久はこれ以上傷つかないようにと、優しく寄り添って一緒にこれからのことを考えてくれた。

そんな二人だったから、私は彼らの幼馴染みで幸せだと、心の底からそう思えた。

　

なにしてんのかな、私。

二人を大事に思ってるとか抜かしといて、こういうときに何一つも出来やしない。どうしたいのかも分からない。当たり前だ。自分のことすら思うようにやれない未熟者が、他人に何かしてやれるとでも言うのか。

あの二人は努力の出来る人間だった。一人はいつ何時も自分が一番でないと済まないような、自尊心の狂った努力家。もう一人は周りに何を言われようとくたばっても夢を諦めないような、神経を疑うほど粘着質な努力家だ。

今まで目を背けてきたが、そろそろはっきりしなきゃいけない。本来なら私は、そんな彼らの幼馴染みであるのだと胸を張れるような人間じゃないんだから。

私は生まれてこの方、何かに夢中になったことなど一度もなかった。努力を重ねたことなんてないんだ。何をやるにも中途半端で、結果的に上手くいってもその過程が空洞なんだから何も蓄積されていない。学力だってそうだ。毎日勉強してる訳じゃない。それどころか、家に帰ってシャーペンを持ったのなんて週末課題を課せられる日曜日の就寝前ぐらいだ。テストで良い点をとれるのは答えを覚えているから。一度授業を受ければ十分、私は内容を記憶している。

皮肉にも私は、努力することが出来ない。

こんなにだらしない私を、二人は突き飛ばさずにいてくれた。“だらしない”を嫌うかっちゃんが、“才能”を見誤られている出久が。“努力”を日常としている二人が、だ。

グッと足に力を入れて、重い腰を持ち上げる。

何ができるかなんてわかるわけない、何かしなきゃわからない。

薄手のカーディガンを羽織り、サンダルを履く。

夏でも夜は、冷えるんだよなあ。