何も知らない (ページ14)

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十度目ページ14

越後くんが楽しそうに話しているのを聞いて、目があったら相槌を打つ。別に面白くないわけではないので、たまに笑ったりもする。

よかった、少し安心した。

沈黙が続いたりすることもなく、男女間でなんらかの距離があくこともなかった。かなちゃんも普通に笑っているし、城崎くん達も退屈していないと思う。とんでもなく突き刺さるこの視線以外は全く順調である。

それにしても彼らだってまさか気付いていない訳でもないだろう。教室内の全方位から向けられるこの視線。かなちゃんは確実に気付いているけど無視を決め込んでいる。薄々皆さんも感じてはいるだろうが、何を隠そう彼女はめちゃくちゃに強い。どれほど強いかと言うと、一軍女子がわかりやすく距離を置くぐらい。

ダメだ、胃が痛い。なんで皆こんな熱烈な視線の中で平然と喋っていられるのだろう。あんたらもなんでだよ飯食えよ。

「ねぇねぇ、俺ずっと気になってたんだけど望月さんって恋愛とか全く興味ないの？」

こちらに話を振らんでいい。心臓耳から飛び出るかと思ったわ。可笑しいなこの例え。

『うーん、別に興味がない訳じゃないんだけど…自分のこととなると、良く分からなくて。』

嘘である。興味があるどころの話ではない。少女漫画なんてざらに見てる。恋をして、彼氏がほしい。

誰でも言い訳じゃなくて、ちゃんと恋に落ちてみたい。漫画のような恋愛がしたい。

「そうなんだ！じゃあ誰かと付き合ってみたいとか、思ったりする？」

バリバリにね？？？

私だってお年頃だもん欲しいよ彼氏。けどわかんじゃん、私が下手に誰かと付き合ってみろ。確実に荒れるぞ。女子達が。

『そうだね。ちょっと憧れたりはするかも。でも今はいらないかなぁ。』

嘘だよそうだよ。いるいる、ほしいほしい、彼氏ほしい。彼氏欲しい。えっ彼氏欲しい(ガチ)。

「そっかぁ。じゃあ今誰かが告ってもダメなわけだ。残念だったなみなと！」

「ちょっおい！やめろよ！」

そうだよやめろよふっざけんな。女子の目見ろよマジで。はぁ許さん。ハァ～～許さん。安心してよ城崎くんだけはどんな手使っても距離置くから。

あははーと適当に笑っているとかなちゃんから同情の視線が送られてきた。後で慰めてね。