何も知らない (ページ11)

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番外編：初夢ページ11

恐らく真っ赤になっているだろう私の顔を見て炭治郎は優しく頬を緩めると、私の耳元に顔を寄せた。

「Aのおかげで、良い一年になったよ。
善逸と伊之助が騒いでいるのを見たAが、禰豆子を背負った俺の隣で声をあげて笑っているような毎日が、俺にとっては凄く幸せだったんだ。」

「本当にありがとう、A」

少し顔を離して微笑んだ炭治郎は、到底同い年には思えなかった。ハァ～～顔が良い。

眉を下げて目を細めた彼に心中で悶えていると、忘れ去られていた二人が全力で雰囲気をぶち壊しに来た。有り難いような一寸残念なような…え？

「イヤァァァァァ！！！(汚い高音)
何、なにしてんの炭治郎！？！？なんでなのなんでなの、いきなりA襲い出してんじゃないよこのケダモノ！！！」

「A、年は？越したか？」

いつも通りクソ汚ぇ高音で炭治郎に横から抱き付きのたうち回っている善逸と、後ろから体重をかけて乗っかってきた伊之助。大丈夫かな炭治郎。善逸速すぎて残像見えたしグエッて聞こえたんだけど。言っとくけど私は大丈夫じゃないよ伊之助。重いし膝にいる炭治郎と善逸にのし掛かってっから。重いし。

ねぇこれ端から見れば私達人間重ね菓子(ミルフィーユ)だよ。えっ重い重い。潰れてまう。

「全くもう！俺達の目を盗んでイチャついてた罰だからね！…うっへへ背中にAの柔らかみを感じる…うっひひぃ」

「顔ひどいぞ紋逸」

「笑い方気持ち悪い…」

『一生独り身でいろ』

「お姉ちゃんってば！！」

『…え、』

もう、何回も起こしたんだからね！と頬を膨らませる我が妹凉音ことすーちゃん。何故かわいこぶっているのだろうかと一瞬頭を回(めぐ)らせたがそれは愚問だった。今日は大晦日、そう年末。私達は例年通り年越しをかっちゃん邸で過ごしている。勿論緑谷一家も一緒である。

すーちゃんは出久が大好きなので出久の前では全面に妹ポジを押し出している。そう私達同じ遺伝子。そしてうちの子、かっちゃんと頗る仲が悪い。細胞が合わないのだとか。しかしかっちゃんも同じような事を言っていたので恐らく細胞は仲良し。

「A、年明けちゃったよ？」

そう言われてテレビを見ると、中々に格好良い人達が最後の歌を全員で歌っていた。カウントダウンコンサートである。私は見逃したがな。

なるほど、つまりはさきまで見ていたのが私の初夢ということか。

なんの夢見てたっけ。

「…お姉ちゃんなんか、幸せそうだね」