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ふと握った手の力を緩めると、力なく倒れ付した男が、私の中に激しい感情を渦巻かせた。
ぐるぐると燃え盛るようなそれは、いわゆる、人を殺した実感と言うものだ。
これを感じている間、私は、私自身が正常であると認識していられる。
「A、終わったか?」
「ああ、バッチリ」
笑顔を見せてみれば、ホルマジオが応じるように手をあげるので、その手に応える
ぱちん、と安っぽいまでに乾いた音をたてた右手には、ずっしりと¨命¨と言うものの重みを感じていた。
『貴女は、自分で自分を殺しているのよ』
そうかもしれない。
ふと思い出した言葉だった。
エルルーシャの言葉。
けれど、あれほどまでに鮮明に覚えていたはずの彼女の姿は、形は、声は、今や煙のように朧気な、頼りない記憶になり下がっていた
「ああ、そういやぁ聞いたかよ、向かいのダイナーの娘が─────」
退屈させないようにという配慮からか、生来そう言った性質を持っていたからかはわからないが、ホルマジオは仕事を終えた帰りにはこうしてよく喋るのだ
「おい、A?」
「……ん?」
「大丈夫か?ぼーっとしてんぞ」
「ああ、大丈夫。この辺りに来るのははじめてだったから、目新しくてね」
流れていく景色から視線を外せば、納得したような表情のホルマジオ。
「ああ、そう言やそうだったかもな。近くに良い店があるから案内してやるよ」
帰り道から逸れると、パーキングに車を止め、得意気な顔をするホルマジオに、私も微かに笑みを浮かべて車から降りた
・
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2018年7月1日 15時