和泉一織のヒミツ【和泉兄弟】 (ページ7)

今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:17,275 hit

兄ページ7

一織が出て行ってから一時間が経とうとしていた。今三月は寮に戻り、自室にこもってる。ベッドに入ってぼーっとしていた。手を上に伸ばす。
追いかけようとしても足がもつれて、動くことが出来なかった。

「……一織……」

『……ごめんなさい。ありがとうございます』

あの言葉を思い出した。
何かおかしかった。おかしかったというより、何かに怯えているような目だった。
あの目は、男性に触られたときの嫌な目。その目と同じだった。携帯を見ながらその目をしていたので、送られて来た人はおそらく男性。

「だけど、その男性って……」

誰のことだ──？

すると玄関から声が聞こえた。
もしかすると、一織かも！？
急いで下りて、確認すると、仕事から帰ってきたみんなだった。つまり、一織ではない。

「なんだ……お前らか……お帰り」

「なんだってなんだよ、みっきー」

「……はは、ごめん」

ため息をついて、自室に戻りベッドにダイビングする。
一織が寮から出て行った。ということを、メンバーに言うべきだろうか。もし言ったら、必ずこのセリフがでると思う。

『なんで出て行ったんだ』

男性恐怖症のことを、言わなければならない。しかしアイツはまだ言ってほしくないと、迷惑かけたくないから黙っといてくれと、言った。

「……けど、大事になる前に……言わねーとな」

ごめんな一織、後でロップちゃんあげるから許してくれ。
そう思いながら部屋から出て、皆がいるリビングに入る。と思ったが陸しかいなかった。

「……さっきは、あんな態度とってごめん」

「え？《なんだお前らか》のやつ？」

陸が反応したので、三月はゆっくり頷いた。すると彼はニコリと微笑みながら

「オレは気にしてないよ！……何かあったんだろうな、って思った」

ピクッと耳が動いて、陸の目を見る。何もかも見透かされているような、そんな瞳。

「……あぁ、お前の言う通りさ」

「やっぱり？皆を呼んだ方がいい？」

「ん、お願い」

「了解」

そう言って、二階に行って皆を呼ぶ陸。
陸って、不思議だよな。何かこういうとき、勘が鋭い。
目を瞑り深呼吸をして、今まであったことを頭の中で整理する。目を開けて、頬を手で叩く。

必ず弟を……一織を助けてやる。
待ってろよ、一織。

兄ちゃんが、助けてやるから──。