和泉一織のヒミツ【和泉兄弟】 (ページ12)

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何もわかってないページ12

兄のことを悪く言うなら許さない、一織は確かにそう言った。

こんな兄を、庇ってくれるのか……？一織はオレを庇って、何も思わないのか……？

「……いおりくん？キミはいつから僕に、そんな態度をとるようになったのかな……？そんな態度とったら、仲間を──」

ビクッとなり、一織は右足を後ろに引く。やはり、まだ怖いようだ。

今度こそ……オレが一織を守る……。兄が弟を救う。やってやる。

「一織……」

あとは、任せろ。
一織の肩を掴むと、後ろへ引っ込めた。それをメンバーは一織を引き取り、守るようにする。

「兄さん！」

「大丈夫だって！そこで見てな！オレが一織を、救うから！」

とは言ったものの、何をどうしよう。ここは地下。携帯を見ると圏外と示されていた。分かってはいたのだが。

「……なんで一織を狙うんだ？他にもつったらアレだけど、いるだろ？一織以外のヤツとか」

「……いおりくんは、格別なのさ……」

小顔で、イケメンだが可愛い顔をする。そして優しい声。たまらない。

「それに……いおりくんは一人だから」

「……は？」

「いおりくんは、皆とは違って一人だから。寂しそうだから、いおりくんを僕のものにして一緒に遊んでやるのさ──」

コイツは、何もわかってない。正義のつもりなのだろうか。自信満々に、誇らしげにそう語る。何も、一織のことを分かってない。

「……っ！ざけんなよ！」

男に向かって走り、胸ぐらをつかむ。

「何が一人だ！何が寂しいそうだ！お前がやろうとしてんのは、ただのストーカーだし迷惑だっつーの！そこんとこ、覚えとけ！それに、一織はオレ達がいるから一人じゃねーよ！」

早口で全て言い終えると、息が乱れる。胸ぐらを離せ、と命令されるも無視。ずっと離さず、とにかく相手を睨む。幼い頃の自分なら普通に殴っていただろうが、ダメだ。アイドルなのだから。
と、上の方でパトカーの音が聞こえた。
……？誰か通報したのか……？でもここは圏外のはず……。

「そこの男ー。言っとくけど、もう警察に通報してるからな。ここに来る前に、連絡しといた」

後ろの方で、そういうリーダー。
さすが大和さん。
男の顔を見ると、蒼白してる。みっともねえ。
呆気なく、男を逮捕した。一織のところに行くと、携帯をつつき男の連絡を削除していた。電話番号もメールアドレスも変える作業を、テキパキとしていた。
これであの男から、連絡くることはないだろう。
ほっ、と安心した顔を一織はしていた。