和泉一織のヒミツ【和泉兄弟】 (ページ11)

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男の正体ページ11

「つーか、誰だよあの男……」

倒れてる男を、遠くから見る三月。中年男性でら少しぽっちゃり体型の人。

……どこかで見たような……。

「兄さ……あの人は……」

兄さんが知ってる人です──。

そう、付け足された。

「ウソだろ？オレが……知ってる人……？」

知人。そう言われて、グルグルと思考を回す。誰だ……。誰なんだ……。オレが知ってる……人だと……？全く、心当たりがないんだが。本当にオレが知ってる人なのか？

すると向こうの方で、笑い声が響き渡る。

あの方向って……男がいたところ……！

と、IDOLiSH7全員が一織を囲むようにして守る。彼を、傷つけないために。

「……覚えてないのか……？僕のこと……。あのときキミは弟よりトイレを選んだ、クソ野郎だったよな。僕はよーく覚えてるよ」

な……っ！？んでそれを……！？……ま……さか。お前って……！？

「……あんとき、一織を誘拐しようとしたヤツか……！？」

あの時──公園でトイレに行くから待ってろよ。そう告げて、一織を一人にさせてしまったアレだ。まさか、ソイツが今になって自分たちの前に現れるとは。

うん、そうだよ。とは言わずに、ニヤリと口端を立てていた。その笑みが不気味だった。背筋が凍った。なんだあの笑み……。

「キミは本当に、弟思いなのかな？」

パリーン。
この音は知ってる。

オレのハートが砕かれた音だ。

男はゆっくり立ちながら話していく。

「弟思いなら、一人にさせないはずだろう？それも弟よりトイレって……。我慢とかできたはずなのにね。笑わせる」

……ダメだ。あの男に……耳を傾けちゃ……。ダメだぞ、和泉三月。ダメだ……。

「──最低だな、お前」

……本当にそうだな。
今思えば、我慢できたはず。なのに一織を一人にさせて、怖い思いさせて、そしてまさか男性恐怖症になってしまうなんて思ってなかった。
そこに自分がいれば、こうならなかった。一織は普通に、男性と話せれた、触れてた。
それを出来なくしてしまったのは、兄のオレの責任であって──。

「そんなことないです」

一織は男の言葉を否定した。掻き分けて真っ直ぐと、彼の目を見つめて。普段なら絶対にできないことをいましてる。

あの後、兄さんは必死に謝り、必死に私を慰めてくれた。このことは親に言わないでほしい、そう言ったら兄さんは優しく微笑んで分かったと、そう言ってくれました。
だから。

「兄さんのことを悪く言うなら、許しませんよ──」