33 ページ33
彪馬side
A｢何…それ、｣
｢何年も帰ってこられないかもしれないし…どんな姿になってるかも、分からないから。｣
俺は、この日、人生ではじめて涙を流した。
涙がバレないように、顔を必死に反対側に向ける。
もしかしたら、
二度と…帰って来れないかもしれない…。
そんなことは口にしない。
A｢何年でも、何十年でも、私は…っ、｣
｢待たなくて、いい。｣
かすれたようなAの声を遮った。
泣いてちゃいけない。
ちゃんと思いを伝えろ自分。
｢Aは幸せになるために、しっかり自分の未来を生きて。
俺は…Aが諦めないでいてくれた命をしっかり守ってみせるから。
頑張るから…だから…｣
こんなにも自分の気持ちを正直に話せるのは
きっとAぐらいだろうな…
｢日本に帰って来ることが出来たら…
今度は俺から会いに行くよ。｣
そして、気持ちを伝える。
｢Aの気持ちが変わってなかったら…その時は｣
｢その時…は、｣
同じ未来を歩いてくれる……？
言葉に詰まって最後まで言えなかった。
俺はAの手を握った。
でもその手は震えている。
Aの手が震えてるんじゃない。
俺の手が震えてる。
ワガママな俺でごめんな…。
出会った時から散々傷つけたかもしれないのに、
最後の最後までほんとにごめん。
待っててといえば待ってくれる優しいAを
これ以上縛り付けたくない。
数年後、数十年後、もし帰ってくることができたら
必ず探し出して会いに行くから。
だから待っててなんて言わない。
A｢考えは変わらないんでしょ…？｣
ボソッと呟かれたその言葉に小さく頷く。
A｢納得できないけど…どうせ言い出したら聞かないんでしょっ…？｣
苦しげな、でもどこかあきらめたにも似たような優しい声。
こんな時まで笑ってくれるとか…
Aはどこまで俺の事を想ってくれてるの、？
A｢分かった。｣
｢ごめん、ありがとう。…一つだけ約束してくれる？｣
A｢何？約束って｣
｢どんな時でも笑顔でいて欲しい。
俺、Aの笑った顔が好きだから。｣
真剣で真っ直ぐなその瞳に吸い込まれそうになる。
そう、Aの笑顔が____________
たまらなく好きだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めろん | 作成日時：2021年6月28日 6時
