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バン！とAの机を
わざと音を立てて叩く









瑞稀「それ、素手で触んな」



ユキ「、、瑞稀、くん？」









さっきのドスの効いた音が
甘ったるい聞き辛いぐらい高い音に変わる




声替えすぎかよ









瑞稀「生写真は素手で
触れちゃいけないものなんだよ」





ユキ「え？」











え？じゃねぇよ、

指紋ついたらどうすんだよ。









瑞稀「あと、次Aの悪口言ったら
まじで承知しねぇから」









Aっていうのは、

俺の推しのAでもあるけど
遠回しに、佐藤さんのことも表したつもり









多分、俺のせいで
シーンとなってしまった教室は居心地が悪くて

イライラした気持ちと一緒に、足早に立ち去った









大きな音を立ててドアを閉めたら
自分のじゃない、少し早く進む足音が

遠くから時差で聞こえる







「あ、あの！」








優しい、好きなその声に


振り返るつもりなんてなかったのに
体ごと彼女を向いてしまった









「さっきといい、保健室の件といい、
本当にありがとうございました」









彼女は、これでもかってぐらい頭を下げる


後ろに束ねてある髪も
前に落ちてしまうほど。









頭をあげれば
俺の顔をじっと見つめる








でも、そんなAからでた言葉は
思いもよらぬものだった








「……A、ちゃん、、、のこと、
そんなに好きなんですか？」









生写真は素手で触っちゃダメって
井上さん、言ってたからって。




彼女の小さな手には、
Aの、今まで俺は見たことがない生写真









瑞稀「、うん。大好きなんだ」






本人が目の前にいるからってことじゃなくて。

いつも思ってる。本当に大好きなんだ。









だけど そっか、と呟くと、

自分のことのはずなのに
何故か彼女はうつむいて悲しそうな顔をした









「大切に、してあげてくださいね」









Aの目には
まだ消えていないクマが。









保健室で倒れていた時よりも、
昨日あった時よりも弱ってて



本当に儚くて、どこか綺麗だけど
今すぐにでも消えてしまいそうで。









瑞稀「次のミニライブも、行くからね」





そんな彼女に、……言えずにはいられなかった



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