タイムトラベルは突然に 5巻【短編物語】 (ページ29)

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2019年9月27日ページ29

「もしかして、古川？」

「えーと…曽我(そが)ちゃん？奈保子(なおこ)のほうでしょ！」

「あったり～。顔がうるさい真理恵だよね！」

「顔がうるさいは余計だ～」

神奈川県内某所で開かれたのは、真理恵の高校のクラス会。音楽科だったため、3年間クラス替えとは無縁だった。

内部進学者10名、外部進学者14名の計24名で、甘酸っぱい思春期を過ごしたのだ。ませた外部進学者の中には、婚約まできちんと決まっている者もあった。

「はい、それでは出席を取りまーす」

当時学級委員を勤めていた生徒の声が響く。ただこの出席は、高校生の頃のものとはやや異なるらしい。

「浅川ー」

「はーい。今は田中恵里香(たなかえりか)になって、子どもが二人いまーす。小学校の音楽の先生になりましたー」

近況報告も兼ねた出席取り。勿論欠席者もいるのだが、それらは学級委員が近況を聞きに行ったようで、きちんと報告されている。間違っても近況不明の者はいない。

「粟野ー。えーと、旧姓粟野桜子(あわのさくらこ)さんは、今は粟尾さんになって、9月14日に男の子が生まれたそうでーす」

「え、粟野が何だって？」

「粟野が粟野？名字変わっていなくない？」

「違う違う、粟野が粟尾」

このように、結婚後の姓で一帯が落ち着かなくなることもある。クラスの中には未婚者がいれば既婚者もいるし、経産婦もいれば現役バリバリのキャリアウーマンもいる。ただ、全体的に音楽をやっている人が多いのは否めない。

「次、一色ー。一色かおりー」

「はーい」

「うん、代返ありがと」

一色かおりと呼ばれて返事したのは双子のゆかり。かおりは8月に一時帰宅してしまったためか、主治医の許可が下りず、出席できなかったとのこと。既婚者で3人の息子がいることが明かされた。

「そうそう、これ、この間の一時帰宅の時の」

そう言ってゆかりが取り出したのは、一枚の写真。そこには男女が一人ずつ写っており、女性はどう見てもやや痩せたかおりである。しかし男性は──。

「かおりの旦那にしては年いきすぎじゃない？」

「だいたいこんな茶髪じゃないよね」

もしや、ゆかりは双生の姉妹の不倫現場をスクープしてしまったのではないか。かおりに対してスキャンダラスな印象が拭えなくなった時、声を上げたのは真理恵だった。

Marie Furukawa