タイムトラベルは突然に 5巻【短編物語】 (ページ22)

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2019年7月5日ページ22

一色ゆかりは、双生の姉妹のあまりの痣の多さに衝撃を受けた。一方の三室かおりも、双生の姉妹に指摘されるまで気づかなかった痣に衝撃を受けた。

「かおりちゃん、ぶつけすぎだよ」

「私どこもぶつけとらんよ、ゆかりちゃん」

横浜市内のかおりが住むマンションで、二人はのんきに入浴している。かおりの夫や3人の息子たちは会社に小学校に幼稚園にと家を空けており、どんな格好でも恥じらいがないのだ。

「でも絶対おかしいよ、疲れてるんじゃない？今日くらい布団で寝てな」

「えー？最近寝汗凄いけん、干したまま乾いとらんよー」

「そんじゃソファーで！私、皆戻るまでおるけんね」

鏡に向かうように同じ容姿を持つ姉妹。生まれてから35年、互いが存在しない世界を知らず、各地を放浪し続けた。かおりの結婚後は別の土地で暮らしているが、毎週のように顔を見ている。

そんな片割れが遠くない未来に二度と会えなくなってしまいそうな──不吉な予感を胸に、ゆかりはかおりの寝顔を眺めていた。

一方その頃、床上げが済んだとはいえ未だ本調子とは言えない真理恵は一人娘が眠る隙に自分も夢の中に沈んでいた。それは玄関で物音がしても戻らないほどだ。

「戻りましたよ」

物音の正体は空き巣でも典子でもなく、最近めっきり帰ってこなくなった名雲だった。彼も目の下に大きな隈を作っての帰宅である。

彼は居間に敷かれた小さな布団で眠る二人の隣に、崩れるように眠り込んだ。

THE END

『ある梅雨の日に』