タイムトラベルは突然に 5巻【短編物語】 (ページ17)

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1942年5月24日ページ17

「綺麗に咲きましたのね、宮さま」

19年前に身籠ったまま亡くした妻の生き写しだ、と山階宮は思う。櫻と名乗っているが、本当は亡き愛妻なのだろう。否、そうに違いない。微かに残る京言葉の訛りに、ぷっくりとした愛らしい頬──子どもも彼女に似ていたら嬉しい。

「君は…家族はいるのか？」

「へえ？」

19歳になる息子が一人、と答える看護婦。夫はないと言う。佐紀子も、お腹の子どもも生きていたら──ちょうど19歳になるはずだ。誕生日が自分に近づくか、妻に近づくかという会話をしたことがある。

「その子は…春に生まれたのか？」

「春…ええ、そうですね」

宮さまは何でもお見通しですのね、と微笑む櫻。つられて彼の口元も緩んだ。だが、呟いた一言は力ないものだった。

「私にも子どもがいたんだ…」

山階宮は、大正の震災以降誰にも語ってこなかった過去を語り始めた。

THE END

『春生まれ』

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佐紀子女王殿下は明治36年(1903年)3月30日生まれなので、佐紀子さんも3月30日生まれです。櫻さんは3月30日生まれの40歳(満39歳)という設定。

夫の山階宮殿下は明治31年(1898年)2月13日生まれの45歳(満44歳)。暦の上では春生まれですね。紀彦君は2001年3月2日生まれで実はサイバーフォーミュラの主人公・風見ハヤト(2001年3月28日生まれ)と同い年。タイムトラベルしなければ大正13年(1924年)3月2日生まれでした。

父27歳(満26歳)、母22歳(満20歳)。若いね…。でも全員春生まれです。