2019年5月14日 ページ11
陣痛室の中ではいきんではいけないのが鉄則だというので必死に我慢していたのに、いざ分娩台に乗ると禁止されていたいきみを求められる。 もう忘れたーと喚いているうちに胎児の身体が下りてきた。
「あ、だめよ古川さん! 短く吐いて!」
「やっと思い出したのに〜!?」
医者の眼前でインリンよろしくM字開脚を披露していることは不思議と気にならない。 あまりの痛みに自分が何を言っているのかも分からないのだ。 分娩室内部に入ったことは無いので、前例から自分の姿を想像することはできない。 余裕もない。
「出てきた出てきた!」
「ほら、出るとこ見て!」
首を無理矢理動かされて痛いと思う間もなく、自分の下半身から何か出てきたのが分かった。 青紫色だが、出てきた何かは確かに自分と同じ形をしている。
「泣かない…?」
「羊水飲んじゃっているのね〜。 大丈夫ですよ」
取り上げた医者が赤ん坊の口を開けた途端、聞き覚えのない声がフロア内に木霊した。 5月14日は、真理恵の血を引く子どもが初めてこの世に生を受けた日になった。
「わ、いきなり来るんだ…。 はじめまして、あなたのお母さんですよ」
笑っちゃうくらい名雲さんに似ているのね、と疲れはてた真理恵が微笑んだ。
THE END
『こんにちは赤ちゃん・後編』
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やっと生まれました! 5月中旬の時点で11話ということは、恐らく終盤に自らの首を締める心配は無いでしょう(笑)。 笑っちゃうくらい名雲さんに似ている真理恵の赤ちゃん…想像するだけで噴き出しそう。
これは将来遺産争いになっても心配ありませんナ(昼ドラ?)。
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