タイムトラベルは突然に 5巻【短編物語】 (ページ1)

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2019年4月1日ページ1

──寮に入りました。 2ヶ月の修学旅行のような気分です。
夕食はジンギスカンがなんと100円。安くて旨い物にありつけて勉強に励みます。夏休みになったら母さんも北海道に来てください。案内できるように早く町並みを覚えたいです。

身体に気をつけてくださいね。また連絡します。

NORIHIKO KAWAKAMI──

同じタイムトラベラーとはいえジェネレーションギャップが大きかったのは佐紀子のはずなのに、機械適応度は遥かに上回っている。何と言っても携帯メールを使えるのだ。

「紀彦さん、お友だちが増えて楽しそう」

昨晩は心配のあまりろくに眠れなかった佐紀子は、ほぼ二徹状態だ。今朝は羽田空港まで一人息子を見送った。彼女の結婚前の行動範囲は西は須磨別邸、北は群馬県渋川市伊香保温泉までである。北海道など地の果てに等しい。

「ええと、楽しそうで何よりです。紀彦さんこそ御体に気をつけて…」

──楽しそうで何よりです。紀彦さんこそ御体に気をつけてくださいませね。お勉強もお友だちと遊ぶことも大切になさってね。夏になったらお会いしませう。佐紀子──

第一志望の公立高校に落ち、鎌倉山の高校に通った3年間。その間に大学進学後にかかる費用を必死に稼ぎ、勉強にも手を抜かなかった。大学も第一志望校には行けなかったが、好きな勉強をいくらでもできるのだ。

18年間、宿泊行事を除いて離れることのなかった一人息子。自分が持てるだけの愛情を注いで育てた子が急に逞しく思えた。

THE END

『人生の旅路』

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佐紀子さん、人生初の独り暮らしであります。どんなものでしょう。