タイムトラベルは突然に 2巻【短編物語】 (ページ8)

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2016年4月25日ページ8

「そういえば、どうして名雲さんは私を呼び捨てにするんですか？」

隠された過去を紐解いた始まりは、真理恵がずっと秘めていた疑問からだった。テレビでは脱線事故の特別番組が放送されていた。

「欧米では、ファーストネームに敬称を付けないでしょう」

「確かに付けませんけど！…っていうか私は渡航歴はありますけど欧米に住んだことは無いです」

そんな理由で呼び捨てにされていたのか。確かに英訳すると”Marie(まりえ)”と”Mr.Nagumo(なぐもさん)”であるが。だが、かつてひと月程は”Ms.Furukawa(ふるかわさん)”と呼ばれていたはずだ。どうしてこうなった。

「では、以前の呼び名に戻しましょうか」

「ええ、お願いします」

この際、公平に敬称さえ付けば何でもいい。古川さんでも真理恵さんでもいい。でも彼のファーストネームは知らない…と、思いつくもの全てが浮かんでは消えていっていた。

「メリちゃん」

「…はい？」

テレビから、この事件の唯一の行方不明者の特集を行うという旨のナレーションが聞こえてきた。

「いやいやいや、私あなたにそんなニックネームで呼ばれたことありませんよ」

ただ、自分は同居人に呼び名を考えてもらいたかっただけなのに。何故「メリちゃん」などと呼ばれなければならないのか。そんな呼び名をされた覚えは無い。そして、裏がありそうで恐ろしい。

「覚えていらっしゃらないのですか、メリちゃん？」

「というか、どうしてメリちゃんなんですか？」

真理恵は友人に「まりえちゃん」「まりちゃん」「りえちゃん」と呼ばれることはあったが、「メリちゃん」と呼ばれた覚えは無い。誰だ、そんなニックネームを付けたのは？奇特なニックネームを付けた人は何となく覚えているものだが、何故か記憶の片隅にも引っ掛からない。

「知り合いがね、貴女のことを『メリー』と呼んでいたんですよ」

「…その、知り合いって？」

真理恵の記憶は2005年迄で、自分は20歳だった。そうなると、彼は当時10歳か11歳ということになる。大学に進学後、小学生とは全く接していないのではないか。精々幼馴染みの年の離れた妹と一度遊んだか遊んでいないかといった具合で、名雲ではない。近所で名雲という名字も聞いたことがない。

「従兄、かピアノの先生か…どちらだったかな」

To Be Continued...