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2016年11月24日 ページ37

朝カーテンを開けると、空から白いものが降ってきていた。 雪だ。
年相応に若い隣人は道端に少し積もった雪を手にとって雪合戦に興じている。 20年前の自分を思い出して、真理恵は笑みを浮かべた。

「あんなに遊んで、風邪引かないのかしら」

「どうでしょう? ナントカは風邪を引かないと言いますよ」

「暴言ですか?」

生まれてこのかた風邪らしき風邪一つ引いてこなかったと思っている真理恵からすると、同居人のこの一言は暴言に等しい。 だが、隣人のうちの一人は名雲と同じ大学に通っているらしい。

「失礼。 他意はありませんよ」

それにしても懐かしいですね──と遠くを見つめる同居人は、自分と他人を重ねているように見えた。 自分の知らない誰かと、自分自身を。

「他意、ねぇ…」

ここは2階で、雪を手に取るのに容易な高さではない。 既に人手に渡っている3階建てだった実家では楽器や踊りの練習に使われていた3階から住居の2階天井に下りて積もった雪を手にとったことがある。

「貴女のご実家は3階建てでしたよね」

「は?」

丁度実家にいた頃の回想の海に湯たっていた真理恵の耳に飛び込んできた衝撃的な一言。 名雲とはかつて会ったことがあるらしいが、どこで会ったかは覚えていない。

「あっ、バスに遅れる!」

時計の針は止まらない。 今日は珍しく同時に家を後にした。

THE END

『雪の日の思い出』



「雪で傘なんて差すんですか?」

「差さなければ濡れるでしょう。 風邪を引きますよ」

「へえ、知らなかった」

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道産子は雪で傘を差しません。
(真理恵が生まれる10年前まで、河原一家は北海道に住んでいた)

2016年12月24日→←続・2016年10月23日



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作者名:宮泉ゆり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年9月21日 20時

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