タイムトラベルは突然に 2巻【短編物語】 (ページ30)

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続・2016年9月11日【130】ページ30

「あ、葵？おきれいなお嬢さんが二人…」

優秀な名雲さんの顔色が変わりました。夏場で蒸し暑いはずなのに、血の気が引いています。

「ええ、上のお嬢さんは海外を飛び回っているそうでお会いしたことありませんが、下のお嬢さんは可愛くて性格も良いんですよ……って、え？」

二人が知り合って1年と少し。はじめは必要以上に神経質だった真理恵さんも、次第に生来の大雑把さを取り戻してきました。

ですが、そんな彼女でさえ気づくほど顔色が悪いのです。おきれいなお嬢さんを二人とも想像してしまったのでしょうか。

「あれ、名雲さん？」

どうやらそうでもなさそうです。顔を紅く染めて、初恋の少年のようになってしまった訳ではありませんもの。

「おーい…」

「これからあの人が来ますよ、早く片付けましょう」

いつも肝心な所ではぐらかされてしまうので、しょんぼりと肩を落とす真理恵さんでした。これでもアラサーのお姉さんなのよ。

所変わって、名雲さんのお部屋の隣の部屋でございます。こちらのお部屋はルームシェア用の3DK。女子大生が4人暮らしております。

「ユッコちゃん、これからどうするの？」

「ええとね、横浜に帰って公務員になる」

「え、公務員試験受かったの？」

「うん。地方公務員ね」

一人は福井百合子さん。友人からはユッコと呼ばれていますが、アイドルではありません。年齢は本当に21歳。彼女はお隣の名雲さんと同じ大学の文学部に通っていますが、キャンパスが違うので面識は無かったようです。

「凄いな、ユッコちゃんは高校は推薦で大学はAOで就職も早く決まって」

「みっちゃんは？」

「私は、大学院に行くけど…」

彼女は高尾美鈴さん、22歳。童顔ですが一番の年長者で、実は名雲さんより年上です。

「やっぱり、離れ離れになっちゃうよねー」

「沙彩子ちゃんはどうするの？」

「海外留学」

「か…⁉」

就職活動をしている素振りも見せず、衝撃発言で周囲の度肝を抜いたのは井筒沙彩子さん、同じく22歳。某国立大学の音楽学部に在籍しています。将来は楽器の演奏者でしょうか。

「沙彩子ちゃん、どこ行くの？」

いち早く落ち着きを取り戻した美鈴さんが聞きました。

「オーストリアの、ウィーン」

「何ですって⁉」

狭い部屋の中で大声を上げた百合子さんとは対照的に、いまいちが合点が行かない様子なのは浦野麻理奈さん。 4人の中で一番の長身で、スレンダーです。

To Be Continued...