2016年3月27日・六【80】 ページ3
「絶対そんなこと思っていないでしょう…。 まあ良いや、まず蝋燭とお線香を買って、ザルを借りましょう。 ワンセット100円ですよ」
知識をひけらかそうとしてあえなく失敗に終わった真理恵が、不貞腐れたように早口で言った。
社務所でお守りや
「それで、蝋燭とお線香を捧げるのですね?」
「ええ。 それから、洞窟に入って小銭を清めるのですよ」
稀に、『お金が何倍にも増えますように』と紙幣を洗う人もいるが、それは神社側が禁止しているのでやらないように。
「硬貨が落ちていますね。 気をつけてくださいよ、真理恵」
銭洗水の中には、清めている最中にザルから溢れ落ちたと思われる硬貨が多数落ちていた。
この湧き出る銭洗水は、鎌倉五名水に数えられている。
「あなたこそ、どさくさ紛れに小銭を盗まないでくださいね」
「どこの賽銭泥棒ですか…」
そんな軽口を叩きながらも、真理恵は銭洗水の中に硬貨に落とすことなく、名雲はどさくさ紛れに硬貨泥棒を働くことなく、参拝を終えた。
銭洗弁財天を出ると、しばらく住宅地が続く。
「鎌倉は、県内で一番地価が高いんですよ」
「そうですか。 敷地も随分広いとは思いましたが」
つまり、鎌倉に一軒家を構えているのはそこそこの資産家ということになる。 鎌倉、江の島を通る江ノ島電鉄線(江ノ電)の路線に高所得の住民が多いのはそのせいだろう。
「それ以外にも、お洒落なアパートメントがたくさん建てられています。…あら、こんな所にワインが?」
「上品な酒屋ですね」
ただ、名雲は都内の苦学生。 女性を一人囲えるくらいだから、苦労という程でもないかもしれないが、一応苦学生と書いておこう。 だが、アルコールは嗜み程度しか摂らないという。
真理恵の場合、酒は好きなのだが極端に弱く、飲むとお猪口一杯で酔いが回ってしまう。
そして、ウイスキーボンボンで酔っ払ってしまうこともあるので、彼女にアルコールを与えてはいけない。 ただ、その事実を名雲は知らない。
To Be Continued...
2016年3月27日・七【80】→←2016年3月27日・五【80】
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