32【銭 センカ 貨】 ページ34
*
「お前ちょっと手ェ出せ」
今回の青流寺での事を自主反省して落ち込むハナエくんに、イツキくんはそう言った。
「手……折るんですか?」
「俺を何だと思ってるんだ!折んねぇよ、いいから出せ!」
恐る恐る差し出すハナエくんの手のひらに落とされたのは――。
「隠世の金。それが今回の賃金だ」
「小銭ですか」
「不服か」
「いいえ」
私はその三枚の金貨に興味を引かれてハナエくんに近寄る。
「ねぇ、ハナエくん、それ見せてもらってもいい?」
「うん、いいよ」
そこには五円玉と一円玉、それと狐が描かれた四角い金貨もあった。
「すごい……綺麗」
「お前も欲しいのか?」
「あ、ううん、欲しいわけじゃなくて……こういうの興味があって」
たぶん、『歴史好き』が講じてるんだと思う。昔のお金に似ているし。
「そういえば、Aちゃんも、ここのバイトになったんですか?」
「いや、Aはバイトじゃない。助手として手伝ってもらうことになった」
「だったら賃金は……?」
「……ない」
そう、私とイツキくんは雇用関係ではないのだ。
あくまでもお手伝いをするのが私の役目。
「それってタダ働きじゃないですか!?」
「私はその代わりに別のものを貰ってるから」
「別の?」
「うん。……情報」
情報。
なぜ自分には妖怪が見えるのか。
妖怪を寄せ付けるのか。
妖怪の干渉を受けないのか。
それを知る手がかりを得ることが、私にとっての報酬となる。
「そうなんだ……てっきり、Aちゃんも、安倍さんに弱みを握られているのかと」
「マジでお前、俺をなんだと思っていやがる」
リン―
《そろそろ亀薬堂へ行く頃合いじゃない?》
「あぁ、分かってる」
「かめくすりどう?」
「
「亀薬堂といえば、親分さんに言っていた薬屋さん?」
「あぁ、そうだ」
「でもそこって隠世にあるんですよね?妖怪にでもお使い頼むんですか?」
でもさっき『行く頃合いじゃない』って物怪庵が、イツキくんに言ってたっていたよね。
ということは、行くのはもちろん……。
「これくらい自分で買いに行く」
「自分で?」
「あっ」
珍しく焦った様子のイツキくん。
「隠世に行けるんですかッ!?」
ハナエくんの必殺:期待の眼差し。
あの目で見られたら、私は断る自信ないなぁ……。
《Aもハナエも行けるわよd(・v・)b》
「まじで!」
「私も?」
私とハナエくんが、この言葉にその気にならないわけが無かった。
*
-紙幣も気になる-
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レア - 凄く面白いです! 朱里ちゃん可愛い! 続きが読みたいです! (2019年2月14日 21時) (レス) id: 47e47ec318 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - わわわッ!!/// 私も不機嫌なモノノケ庵を愛読してまして...。この夢小説を見かけてとっても嬉しく思ってます!!頑張ってください!! (2017年5月31日 23時) (レス) id: 9fc158d11b (このIDを非表示/違反報告)
雪菜 - オケです!これからも更新頑張ってください! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6399b4f188 (このIDを非表示/違反報告)
うし(プロフ) - ハニーさん» ありがとうございます!気に入っていただけて嬉しいです、これからも頑張ります。よろしくお願いします。 (2016年10月6日 23時) (レス) id: 2c2d75bad9 (このIDを非表示/違反報告)
ハニー(プロフ) - 天宮さん可愛いです!これからも楽しみにしてます! (2016年10月4日 23時) (レス) id: 235af3f7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うし | 作成日時:2016年8月6日 1時