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「いいと思うよ。俺は」


スっとその場に、俺に向けられて出された言葉。

「……え…」

俺の心情をピタリと当てた、返答とも言える発言。
音を聴いたと言っても、それでもそこまで分かるかと思うぐらいの完璧な回答。
俺はそれに驚いて、善逸の方を向く。

いつになく真剣な横顔。
昼間はいつも禰豆子ちゃん禰豆子ちゃんって、あんなにはしゃいでるのに…


「……初めて会った時、初めて坂田の音を聴いた時。
坂田はどこにでも居るような普通の人と全く同じの音だった。

炭治郎みたいに、何処までも続くような広い心を持ってるわけじゃない。変なことも考えたりするし、意外と自惚れてる所もあったりする。
相手を責めたり、妬んだり。そんな所もあるのが普通。
それがきちんと、正常にそれぞれ音を出していた。

それが普通。
少し音が高くなったり、低くなったり。気持ちの問題で音も少しずつ変わる。
音が変わるのは、そんなに不思議な事じゃない」

少しずつ、少しずつ善逸は言葉を重ねていく。
その一つ一つの言葉の重みは、多分善逸にしか詳しくは分からないのだろうけど、ずっしりと、もたれかかって来る。



「…ただな、坂田。お前の音は普通なんだよ。なんも面白味もなくって、何も変哲もない。
でも、音が急激に変わったり、誰かに影響されて、変な音が混じったり。そんな事が頻繁に起こる。

仕方がない。こればっかりは。
音聞いても信じ難いけど、お前未来人なんだろ?
鬼もいなくって、親に捨てられてもまだ希望があって、安定して生きることができる世界。
それが令和時代……だったっけ?」


善逸がこちらを見て、確認するかのように俺の顔を覗き込む。

俺はすぐに、あってる。と返事を返し、まだ治っていないぼやけた視界を治すために、無理やり目を擦った。



「……まぁ、それでも、いきなり仲間と離されて、大切な人が死んでるかもしれないって言う一心でここまでたどり着いてきたけど、それまで変なのに巻き込まれて、片腕折れて、死体沢山見て…
それでちゃんと最初の気持ち保ててるのは逆に怖い。
と言うか、ここまでこんなに苦しんできて、今度は自分の弱さに嫌になって…

それでもまだ刀握ってる“お前はすげぇよ”。
辛かったら休んだっていいと思う。誰かに甘えたっていいと思う。少なくとも俺はそう思ってる。
全部綺麗事で進めようとしても、それは無理。
坂田が今思ってる事が正しい」



……せっかく目を擦ったのに、善逸のせいでまた視界がぼやけてきた。

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きのこの里(プロフ) - コメント失礼します。もう更新する予定は無いのでしょうか…?出来れば無理しない程度に更新してくださると嬉しいです…! (2022年8月31日 1時) (レス) @page21 id: b722612dff (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 更新めちゃくちゃ楽しみにしてます! (2020年12月28日 14時) (レス) id: 38881abff7 (このIDを非表示/違反報告)
空き地 - 初コメ失礼します!読んでいてとてもおもしろいです!無理はせず頑張ってください! (2020年7月12日 21時) (レス) id: e153c44a3c (このIDを非表示/違反報告)
筆ペン屋さん(プロフ) - haru☆さん» またコメントありがとうございます!ただいまです!これから少しずつですが更新していくので、ぜひぜひ見ていってください! (2020年6月10日 16時) (レス) id: 51416204c7 (このIDを非表示/違反報告)
haru☆(プロフ) - 待ってました〜!おかえりなさい! (2020年6月10日 13時) (レス) id: e37ae2e853 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:筆ペン屋さん | 作成日時:2020年5月8日 13時

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