11 ページ13
N side
池の中の筈なのに奥がどんどん広がっていくような感覚がした
奥が暗くて底が見えなくて……まるで海
そんな中、Aは目と鼻の先に居た
ただただ何の抵抗もなく、流れに身を任せて池の奥へと落ちて行く
髪の毛が水中の中で揺れ動くため、顔がはっきりと見える
出会って初めて、ちゃんと彼女の顔を見た
初めて前髪で隠れていた目を見た
この水底に溶けそうな青……光が当たったら、どんな色をするんだろう
あぁ、違う。こんな事考えている場合じゃない
彼女の新たな魅力に興味が唆られるのを堪えて、Aに手を伸ばす
「っ、」
あと少し…
限界まで伸ばした指先がAの腕に触れた
その勢いで腕を掴んで引き寄せ、空気のある方へ戻る
「…っは、！」
Aを池の外に上げてから自分も上がる
その場に置き去りにした杖を手繰り寄せて、Aと自分の服を乾かす
「アクシオ」
それから魔法でタオルを引き寄せてAの髪の毛や顔を優しく拭く
その間もAは始終抵抗しない
ただ、その時
水中に居たからかAの顔が髪から滴る水などで濡れていて、泣いているように見えた
「その、大丈夫？…な訳ないよね…
…あのさ、どうしてこんな事したの?」
『……』
「A…？」
質問を投げかけてみても答えは帰って来ない
タオルや髪の毛で顔は再び見えなくなった
__グズッ
「！…」
その時、鼻を啜るような音が聞こえた
それは明らかにAからのもので、鼻を啜った時に体が少しばかり揺れた
俯いているから顔なんてものは到底見えないけど分かる事はある
でもこの鼻の啜り方はきっと、泣いている時のものだ
何度も何度も、小さく申し訳なさそうな啜る音が聞こえてくる
…あぁ、そっか。Aは、泣く顔を隠したかったのか
水を掛けてしまえば涙かただの水かなんて分からない
人前に見せるのは良くないと思っているのか、教わされたのかは分からないけど
あんなに平然と淡々としているように見えた彼女は、あの時、全然平気じゃなかった
仲間が死んで、独りになって……
「…僕は絶対に君を傷付けないし、捨てない。絶対」
『、…』
それでも声を押し殺して、堪えようとしているみたいだった
もっと縋るように泣きついて、声を出しても良いというのに
悲しい時は悲しいって甘えてくれても良いのに……
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 226人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
I'll Never Let You Go.【FB】 ニュートと初恋泥棒。II【ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生】 ニュートと初恋泥棒。【ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅】もっと見る
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
時々雨(プロフ) - コメント失礼します。まだペルセルトちゃんの笑顔が見れてないので、いつか見れるといいなと思いました！とても気になるお話で、続きを楽しみにお待ちしてますね！ (2020年11月20日 22時) (
レス) id: 5e6f4aeb76 (このIDを非表示/違反報告)
Haruka Abe(プロフ) - すごく面白いです！ (2019年10月16日 1時) (レス) id: a5df0a293e (このIDを非表示/違反報告)
ケイ(プロフ) - 面白いです。文に奇想転結があって頑張ってください (2019年9月4日 3時) (レス) id: 24833da0d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちもち | 作成日時：2019年7月15日 18時
