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筆なんか要らない
パレットも、要らない
要るのは絵が描かれてるキャンパス
「何してんだ」
『…絵を、終わらせようかと』
「…それ、絆創膏貼るからな」
先生が差すのは私の親指
きっと言いたいことはあるだろうに、何も聞かないで待っていてくれる
先生が見つめる親指は、皮膚が切れて血が垂れる
でも床には垂らしてない
その赤を押し付けて、拭うように横に動かすと
『出来た…』
描いていた景山に血が通った気がした
うん、やっぱり赤、似合うね
でもそれも直ぐ変わってしまう
乾いたら色が黒くなる
だから、今この瞬間に出来上がったものを目に焼き付けてから
さっき指を切るのに使ったハサミを手に持つ
これで、さようならだ
「待て」
あと数センチでキャンパスに刃が届きそうだったところで、先生が制止の声を掛ける
「それ、俺にちょうだい」
『えっ…』
「どうせ捨てちゃうんだろ？だったら良いよな」
そう言って先生は私の手を包んで、手に持っていたハサミを取った
そしていつから持ってたのか、ポケットから絆創膏を取り出して指に貼った
…普通に絆創膏だけくれれば良かったのに
それに持ってたってことは、準備してるときをモニターで見てたのかな
「んで、今度はこっち」
『…大丈夫ですよ』
そう言って見せて来たのは湿布だった
「何発か体に入ったろ。
痣になる前に貼るから、少し制服捲って」
『…多分、もうなってますよ。
でも大丈夫です。痣なんて放っておけば治るものですから』
「貼るぞ」
私の言い訳なんて聞く耳も持たずに少しだけ湿布のフィルムを剥がし始めた
…腹、括ってしまおうか
うん。もう良いや
景山と似た何かを持つこの先生なら、別に良い気がした
スカートにしまっていたシャツを引っ張って、ゆっくりと捲り上げる
すると、先生は剥がしていたフィルムを戻して、目を見張った
これ以上目を開いたら落ちちゃうってくらい
そういえば、景山もこれを初めて見たとき
同じ顔してたなぁ
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もちもち(プロフ) - ユイさん» そう言っていただけると、とても励みになります。ありがとうございます！これからも精進していきますので、よろしくお願いします。 (2019年4月14日 21時) (
レス) id: 31f6343f7f (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - 一気読みさせてもらいました！言葉の選び方とか全て含めて読みやすいし面白いです！ (2019年4月11日 22時) (レス) id: 40031fd2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちもち | 作成日時：2019年4月8日 23時
