・〜柊side〜 ページ19
・
『景山はね、宝探しが得意だったんだよ。
…先生と、同じくらい』
腕の中にすっぽりと収まっているAが、景山のことをゆったりと喋り始めた
昔を思い返すような声色で、
ため口で。
こいつはいつも目上の人間やあまり話さない奴には敬語を使う
だから俺と喋るときに敬語じゃないのは距離が縮まった気がして、何故か優越感が湧いてくる
『彼女は、隠したものを直ぐ見つけちゃうんだ。
どれだけ隠しても、何処に隠しても…
あのとき景山に見つかったのは偶然だったんだけどね』
「あのとき…？」
『…1年の頃、次の授業が体育で着替えていたときがあったの。
そのときに、本当に偶然に…
それはまた今度で良いや』
少し鼻にかかったように短く笑って、少しの沈黙が生まれた
その沈黙は妙に心地良くて
いつもなら、さっきの話の続きが気になるのに、それすらも感じない程だった
『私ね、茅野さんが眩しくて、近くに居れなかったんだ。
綺麗で、キラキラしてて…
…みんな、そうなんだよ。
今を、前向きに生きている人とか、凄く綺麗なんだよ』
「へぇ…」
『先生は、……もっと眩しい』
「……」
予想外のその言葉に、少し固まった
それにAは反応したけど、それでも話を続ける
『あのね、その眩しさは景山と似てるの。
命を削って、その破片が飛び散って、輝いて…
みんなは磨いてるんだけど、2人は研磨…というより削るって感じ。
粗い紙やすりで力強く削ってる。ときには、アイスピックで』
「…氷か？」
尋ねるとAはゆっくりと小さく首を横に振って、宝石だよ。と返した
こいつのこういう柔らかくて不思議な世界は
なんだか、胸を締め付けるような儚さや脆さがその先にある気がしてならなかった
『削り方は違うけど、輝き方と削られて出た破片の綺麗さは全く一緒。
前を向いて今を生きる茅野さんや、クラスのみんなも凄く、眩しい…
……光が強いと、影は濃くなる。
そんな綺麗なものを見ると、あまりに汚く思えてきて…
だから、一緒に居れなかったんだ』
何とは言ってないが、どれがAを示していたのか痛いくらい理解が出来た
だからあの夜に俺に言った時も
茅野が眼鏡を掛けた時も
微笑んだ顔に、胸の奥が苦しくなったのか
それが分かったと同時に
AにAの未来があるのか不安になって仕方なかった
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 512人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちもち(プロフ) - ユイさん» そう言っていただけると、とても励みになります。ありがとうございます！これからも精進していきますので、よろしくお願いします。 (2019年4月14日 21時) (
レス) id: 31f6343f7f (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - 一気読みさせてもらいました！言葉の選び方とか全て含めて読みやすいし面白いです！ (2019年4月11日 22時) (レス) id: 40031fd2e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちもち | 作成日時：2019年4月8日 23時
